蝶前頭縫合 Sutura sphenofrontalis
蝶前頭縫合は、頭蓋骨の前頭骨と蝶形骨を連結する重要な縫合であり、頭蓋の構造的完全性と機能の維持に不可欠な役割を果たします(Gray and Williams, 2023; Standring, 2024)。

J0077 (頭蓋骨、筋の起こる所と着く所:右方からの図)

J0081 (外頭蓋底:筋の起こる所と着く所を示す図)

J0085 (内頭蓋底、アノテーション付き)

J0087 (左側からの頭蓋骨の正中断図)

J0091 (右の眼窩、アノテーション付き:前方からの図)
解剖学的構造
骨間の連結様式
- 外側面:頭蓋外側面において、蝶形骨大翼(ala major ossis sphenoidalis)の前縁と前頭骨(os frontale)の後外側部が接合し、後下方から前上方に向かって斜めに走行する鋸歯状の縫合線を形成します(Netter, 2023)。
- 内側面:頭蓋内面(前頭蓋窩)において、前頭骨の眼窩部と蝶形骨小翼(ala minor ossis sphenoidalis)の間に形成され、前頭蓋窩の後方境界の一部を構成します。
- 縫合の形態:線維性結合組織(シャーピー線維を含む)により両骨が強固に連結され、鋸歯状の骨辺縁が互いに嵌合することで機械的強度を高めています(Moore et al., 2024)。
周囲の解剖学的関係
- 前方:前頭骨の眼窩上縁(margo supraorbitalis)および前頭洞(sinus frontalis)に近接します。
- 後方:側頭窩(fossa temporalis)および翼口蓋窩(fossa pterygopalatina)に連続します。
- 内側:眼窩(orbita)の上外側壁を形成し、視神経管(canalis opticus)および上眼窩裂(fissura orbitalis superior)に近接します。
- 外側:側頭筋(musculus temporalis)の起始部、頬骨弓(arcus zygomaticus)の近傍に位置します。
血管・神経との関係
- 血管:中硬膜動脈前枝(ramus anterior arteriae meningeae mediae)が縫合部近傍を走行し、頭蓋骨および硬膜に栄養を供給します。
- 神経:眼神経(nervus ophthalmicus、三叉神経第1枝)の分枝である前頭神経(nervus frontalis)が眼窩上方を走行し、縫合部の近傍を通過します。
発生学的特徴
- 胚葉由来:前頭骨は神経堤細胞由来の膜性骨化(膜内骨化)により形成される一方、蝶形骨は軟骨性骨化により形成されます。この異なる骨化様式を持つ骨の接合部が蝶前頭縫合です(Sadler, 2024)。
- 発生時期:胎生期後期から出生後にかけて縫合が形成され、生後2歳頃までは線維性結合組織による可動性を保ちます。
- 骨性癒合:通常、成人期(20~30歳代)までに徐々に骨性癒合(synostosis)が進行し、可動性を失います。ただし、完全な癒合時期には個人差があります(Standring, 2024)。