趾骨 Ossa digitorum pedis(Phalanges of foot)

趾骨は足の指を構成する短骨であり、足部の遠位端において重要な機能を担っています。趾骨は手の指骨と比較して著しく短く太い形態を示し、これは足部が体重支持と推進力発生という特殊な機能を担うための適応と考えられています(Sarrafian, 1993)。

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J0269 (右足の第三中足骨と趾骨:足底面からの図)

解剖学的構造

数と配置

片足には通常14個の趾骨が存在します。第1趾(母趾、hallux)は基節骨と末節骨の2個の趾骨から構成され、第2〜5趾はそれぞれ基節骨、中節骨、末節骨の3個の趾骨から構成されます(Moore et al., 2018; Standring, 2020)。この配置は手指とは異なり、母趾において中節骨を欠くことが特徴的です。

形態学的特徴

各趾骨は底(base)、体(body/shaft)、頭(head)の3部分から構成されます。底は近位端に位置し、近位の骨との関節面を形成します。体は中央部で、左右に圧平され背側に凸状に湾曲しています。頭は遠位端に位置し、遠位の骨との関節面を形成します(Standring, 2020)。

基節骨の底は中足骨頭と関節を形成するための楕円形の凹面を持ちます。第1趾の基節骨底下には2個の種子骨(sesamoid bones)が常在し、これらは母趾球部の荷重分散と屈筋腱の機械的効率向上に寄与しています(Sarrafian, 1993)。

中節骨(第2〜5趾)の底は基節骨頭を受け入れる浅い凹面を持ち、頭は末節骨底との滑車関節を形成します。中節骨は手指の中節骨と比較して著しく短く、特に第5趾では退化傾向が強く見られます(Standring, 2020)。

末節骨は遠位端において平坦化し、足底面には末節骨粗面(tuberosity of distal phalanx)と呼ばれる粗い隆起が存在します。この粗面は爪床の支持組織や指腹部の線維脂肪組織の付着部となり、触覚受容器の豊富な指先の感覚機能を支えています(Moore et al., 2018)。

サイズと相対的長さ

第1趾の趾骨は最も太く強固な構造を持ち、体重支持と推進力発生における重要な役割を反映しています。第2趾の趾骨が通常最も長く、第5趾に向かって順次短くなる傾向がありますが、個人差が大きく見られます(Standring, 2020)。

関節構造

趾骨は以下の関節を形成します: