外側唇(粗線の)Labium laterale

粗線の外側唇は、大腿骨後面の中央部に位置する粗線(linea aspera)の外側部分を形成する隆起した骨稜です(Standring, 2020)。この構造は大腿骨の力学的強度を高め、複数の重要な筋肉の付着部として機能します(Gray, 1918)。

J0229 (右の大腿骨：後方からの図)

J0234 (右の大腿部の中央を横切る：上方からの断面図)

解剖学的特徴

位置と走行:

• 大腿骨体の後面中央部で、粗線の外側(腓側)を構成(Standring, 2020)
• 近位端は殿筋粗面(tuberositas glutea)に連続(Moore et al., 2018)
• 遠位端は外側顆上線(linea supracondylaris lateralis)へと移行(Netter, 2018)
• 大腿骨体の約中央1/3から下1/3にかけて最も明瞭(Platzer, 2009)

筋肉付着部:

外側唇には以下の重要な筋肉が付着します(Moore et al., 2018):

• **外側広筋(腓側広筋)Vastus lateralis:**大腿四頭筋の一部で、外側唇の全長にわたって起始。膝関節伸展の主要な筋(Palastanga & Soames, 2012)
• **大腿二頭筋短頭 Biceps femoris, caput breve:**外側唇の下半部から起始。膝関節屈曲と下腿外旋に関与(Standring, 2020)
• **大内転筋 Adductor magnus:**外側唇の上部に停止(一部は内側唇にも付着)(Moore et al., 2018)
• **外側筋間中隔 Septum intermusculare laterale:**外側唇から起始し、大腿の前後筋群を隔てる(Netter, 2018)

臨床的意義

骨折との関連:

• 大腿骨骨幹部骨折において、外側唇に付着する筋群の牽引力が骨片の転位パターンに影響(Müller et al., 1991)
• 外側広筋と大腿二頭筋短頭の拮抗作用により、骨折部位によって特徴的な転位が生じる(Rockwood et al., 2015)
• 整復時には、これらの筋肉の牽引方向を考慮する必要がある(Tile, 2003)