顆上突起 Processus supracondylaris

J0171 (右上腕骨と顆上突起(破格):前方からの図)
解剖学的特徴
顆上突起は、上腕骨遠位部の内側縁に出現する鈎状または鎌状の骨性突起です。この構造は系統発生学的に哺乳類の一部(食肉目など)に見られる正常構造の痕跡であり、ヒトでは解剖学的変異として稀に出現します(Kolb & Moore, 2000)。
- 位置:上腕骨骨体の遠位1/3、内側上顆の約5-7cm近位に出現
- 形態:通常は遠位内側方向に向かう鈎状または鎌状の突起
- 大きさ:長さは通常10mm前後(範囲:5-20mm以上)
- 付着構造:突起の先端から内側上顆へ線維性靭帯(Struthers靭帯)が伸展し、骨線維性トンネル(顆上孔)を形成することがある(Struthers, 1854)
臨床解剖学的意義
顆上突起とStruthers靭帯により形成される顆上孔は、以下の重要な神経血管構造の通過部位となります:
- 上腕動脈:この孔を通過することで圧迫や絞扼を受ける可能性(Kessel & Rang, 1966)
- 正中神経:顆上孔内で機械的圧迫を受け、正中神経麻痺(顆上突起症候群)の原因となる(Bilge et al., 1990)
- 上腕静脈:稀に同部位を通過し、静脈還流障害の原因となることがある
- 円回内筋の起始部:Struthers靭帯から起始する変異が見られることがある(Kessel & Rang, 1966)
臨床的重要性
- 絞扼性神経障害:正中神経が顆上孔で圧迫され、前腕と手の感覚障害、母指球筋の筋力低下を引き起こす(Spinner, 1970)
- 血管症状:上腕動脈の圧迫により、前腕の虚血症状や冷感、脈拍の減弱が生じる可能性(Al-Naib & Crutchfield, 1968)
- 外傷時の合併症:上腕骨骨折時に顆上突起が神経血管損傷のリスク因子となる
- 画像診断:X線撮影で偶然発見されることが多く、CTやMRIで神経血管との関係を評価(Fragiadakis et al., 1988)