後面(上腕骨の)Facies posterior humeri
上腕骨の後面は、上腕骨体の後方に位置する面であり、解剖学的位置において体幹から離れる方向(後外側方向)を向いています(Standring, 2020)。この面は単純な平面ではなく、上腕骨体全体のねじれに伴って特徴的な立体構造を呈します(Moore et al., 2017)。

J0170 (右上腕骨:後方からの図)

J0173 (右上腕骨の下半分:上方から断面図)
解剖学的特徴
- 上腕骨の後方に位置する面で、前面(facies anterior)と対をなします(Standring, 2020)。
- 腕が解剖学的位置にあるとき、体幹の反対側(後外側)に面し、上腕三頭筋に覆われています(Moore et al., 2017)。
- 表面には特徴的なねじれがあり、上部(近位部)はやや内側を向き、下部(遠位部)は後外側を向いています。このねじれは上腕骨全体の約90度の捻転を反映しています(Standring, 2020)。
- 上内側から下外側へとらせん状に走行する橈骨神経溝(Sulcus nervi radialis)が最も顕著な構造的特徴です(Netter, 2018)。
- 橈骨神経溝は、上腕骨の中央1/3から下方1/3の境界付近で後面を斜めに横切り、幅は約2-3mmの浅い溝状構造を呈します(Moore et al., 2017)。
- 後面の上部は内側頭と外側頭の起始部によって区分され、下部は上腕三頭筋の長頭によって覆われています(Standring, 2020)。
臨床的意義
橈骨神経損傷のリスク
- 橈骨神経は橈骨神経溝内を走行するため、上腕骨骨幹部骨折(特に中央1/3部の骨折)の際に損傷を受けやすい部位です(Shao et al., 2005)。
- 「Saturday night palsy(土曜夜麻痺)」として知られる圧迫性神経障害は、橈骨神経が上腕骨後面を走行する部位での長時間の圧迫により生じます(Bumbasirevic et al., 2016)。
- 橈骨神経損傷により、手関節および指の伸展障害(下垂手:wrist drop)、母指外転障害、手背の感覚障害が生じます(Moore et al., 2017)。
上腕骨骨折との関連
- 上腕骨骨幹部骨折の約10-18%で橈骨神経損傷を合併するとされており、特に螺旋骨折や横骨折で頻度が高くなります(Shao et al., 2005)。
- 骨折部位が橈骨神経溝に近いほど、神経損傷のリスクが高まります(Ekholm et al., 2008)。
- 整復操作や骨接合術(特にプレート固定)の際にも橈骨神経の走行を十分に考慮する必要があります(Bumbasirevic et al., 2016)。
外科的アプローチ