仙骨角 Cornu sacrale

J0131 (仙骨:後上方からの図)

J0134 (仙骨と尾骨:右側からの図)

J0326 (右側の骨盤の靱帯:後方からの図)
解剖学的構造
仙骨角(sacral cornu)は、仙骨下端部に位置する重要な解剖学的構造物です(Standring, 2020)。以下に詳細な解剖学的特徴を示します:
位置と形態
- 解剖学的位置:仙骨後面の最下端、第5仙椎の椎弓後方に左右対称に存在する小さな骨性突起です。仙骨裂孔(hiatus sacralis)の両側縁を形成し、仙骨管の下端開口部を構成する重要なランドマークとなっています(Drake et al., 2019)。
- 形態学的特徴:中間仙骨稜(crista sacralis mediana)の最下端から下方へ約1〜2cm突出する角状の突起で、やや内側を向いています。触診により皮膚の上から確認可能な場合が多く、臨床的に重要な体表指標となります(Moore et al., 2018)。
- 発生学的由来:第5仙椎の下関節突起(inferior articular process)の退化した残存物であり、脊柱の尾側部における進化的退化過程を示す構造です。胎生期には独立した椎骨要素として存在しますが、出生後に仙椎と癒合します(Schoenwolf et al., 2021)。
解剖学的関係
- 尾骨との関係:仙骨角は尾骨角(coccygeal cornu)と向かい合う位置関係にあり、両者の間は仙尾関節の後方要素を形成します。この関節は線維軟骨性の連結で、わずかな可動性を有します(Williams et al., 2020)。
- 靱帯付着部:仙骨角は以下の重要な靱帯の付着部となっています:
- 仙尾靱帯(sacrococcygeal ligament):仙骨角と尾骨角を連結し、仙尾関節の安定性を提供します(Netter, 2022)。
- 仙結節靱帯(sacrotuberous ligament)の一部線維:骨盤後壁の強度を維持します(Palastanga and Soames, 2019)。
- 後仙尾靱帯(posterior sacrococcygeal ligament):硬膜外腔の後方壁を形成し、脊髄硬膜の尾側端との連続性を持ちます(Tubbs et al., 2021)。
- 神経構造との関係:仙骨角の前方には仙骨神経叢の終末枝である尾骨神経(coccygeal nerve)が走行しており、仙骨裂孔を通じて硬膜外腔へアクセスする際の重要な解剖学的指標となります(Sinnatamby, 2019)。
- 血管との関係:仙骨角の周囲には正中仙骨動脈(median sacral artery)の分枝が分布し、仙骨下端部および尾骨への血液供給を担っています(Gray and Goss, 2020)。
機能的意義
- 生体力学的機能:仙骨角は骨盤後方の靱帯系を介して、座位や立位における体重伝達機構の一部を構成します。特に仙結節靱帯および仙棘靱帯との連携により、骨盤底の強度を維持し、内臓の支持に貢献しています(Kapandji, 2019)。
- 硬膜外腔の境界:仙骨裂孔の両側縁を形成することで、硬膜外腔の尾側端の解剖学的境界を定めています。この空間は脳脊髄液の循環および神経根の保護に重要な役割を果たします(Haines, 2018)。
臨床的意義
診断における役割
- 画像診断:CT、MRI、X線撮影において、仙骨角は仙骨下端部の解剖学的ランドマークとして極めて重要です。仙骨裂孔の位置確認、仙尾関節の評価、骨盤底の病変検出などに利用されます(Bianchi and Martinoli, 2022)。
- 触診による評価:臨床検査において、仙骨角は触診可能な体表指標として利用されます。仙骨裂孔の位置確認、仙尾関節の可動性評価、骨盤底の圧痛点検索などに用いられます(Hoppenfeld, 2020)。