上関節突起(仙骨の)Processus articularis superior (Os sacrum)

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J0131 (仙骨:後上方からの図)

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J0132 (仙骨:上方からの図)

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J0134 (仙骨と尾骨:右側からの図)

解剖学的特徴

位置と構造

**位置:**仙骨の上関節突起は、仙骨底の後外側部、第1仙椎椎体と仙骨翼の移行部に一対存在する突起です(Standring, 2020)。これらは第1仙椎の上方に位置し、仙骨管の入口を形成する重要な解剖学的構造です。

**形態:**上関節突起は後外側方向に突出する骨性突起で、その関節面は後内側を向いています。関節面は矢状面に対して約45度の角度で配置されており、この角度は個人差が大きく、腰仙部の可動性や病態に影響を与えます(Moore et al., 2017; Standring, 2020)。

関節面の詳細

**関節面の特徴:**上関節突起の関節面は滑膜関節(synovial joint)を形成し、硝子軟骨(hyaline cartilage)で覆われています。この関節面は第5腰椎の下関節突起(inferior articular process of L5)と対をなして腰仙関節面(lumbosacral facet joint)を形成します。関節面の配置は矢状面に対して約45度の角度を持ち、この配置が腰仙移行部の運動特性を決定します(Moore et al., 2017)。

**組織学的構造:**関節面を覆う硝子軟骨の厚さは0.5-2mmで、年齢とともに変性が進行します。関節包は線維性結合組織で構成され、豊富な神経終末を含むため、疼痛の発生源となり得ます。関節腔には滑液が含まれ、関節軟骨の栄養と潤滑に寄与します(Standring, 2020)。

周囲構造との関係

**靭帯との関係:**上関節突起は複数の靭帯と密接な関係にあります。腰仙関節包は上関節突起を覆い、関節の安定性を提供します。また、腸腰靭帯(iliolumbar ligament)は第5腰椎横突起から腸骨稜に走行し、上関節突起の外側を通過することで、腰仙移行部の過度な運動を制限します(Moore et al., 2017)。

**神経との関係:**上関節突起周囲には後枝内側枝(medial branch of dorsal ramus)が分布し、腰仙関節面を支配します。L5とS1の後枝内側枝が主に関与し、この神経は関節包や周囲組織に分布して疼痛感覚を伝達します。この神経分布が腰仙関節由来の疼痛の神経ブロック治療の解剖学的基盤となります。

生体力学的特性

**荷重分散機能:**腰仙移行部は体重の約60%を支持する重要な部位です。上関節突起を含む腰仙関節面は、椎間板とともに荷重を分散し、脊柱の安定性を維持します。関節面の配置角度により、圧縮荷重の約16-25%が腰仙関節面を通じて伝達されます(Standring, 2020)。

**運動制御:**上関節突起は腰仙移行部の運動を制御する重要な役割を果たします。特に回旋運動と前後屈運動において、関節面の形態と配置が可動域を規定します。腰仙関節面は前屈運動では約10-15度、側屈運動では約5-8度、回旋運動では約2-3度の可動性を持ちます。関節面の配置が矢状面に近いほど、回旋運動が制限され、前後屈運動が優位になります(Moore et al., 2017)。

**脊椎骨盤バランスへの寄与:**上関節突起は脊椎骨盤アライメントの維持に重要です。腰仙関節面の形態と配置は、仙骨傾斜角(sacral slope)や骨盤入射角(pelvic incidence)といった脊椎骨盤パラメータに影響を与え、全体的な姿勢制御に寄与します。

臨床的意義

腰仙移行椎の変異

**分類と頻度:**仙骨の上関節突起は腰仙移行椎(lumbosacral transitional vertebrae: LSTV)の変異が最も多く生じる部位です。Castellvi分類によれば、以下の4つのタイプに分類されます(Standring, 2020; Moore et al., 2017):