椎間孔 Foramen intervertebrale

J0128 (第九胸椎から第二腰椎:右方から、そして少し背面からの図)

J0290 (腰椎の一部の正中断、右切断半分:左方からの図)

J0302 (後頭骨と最初から三番目までの頚椎を含む正中矢状断とそのリング状の組織:左方からの若干図式化された図)

J0616 (腰椎の静脈の正中断面:左側からの図)
椎間孔は脊柱における神経血管構造の主要な通路であり、臨床解剖学上極めて重要な構造です。その形態学的特徴と病態生理学的意義について詳述します(Gray and Williams, 2020; Standring, 2021)。
解剖学的特徴
1. 位置と形態的特徴
椎間孔は隣接する二つの椎骨間に形成される左右対称の開口部で、脊柱全長にわたり規則的に配列しています。その形態は脊柱の各領域で特徴的な相違を示します:
- 頚椎部:前後径が短く横径が長い楕円形を呈し、斜め前下外側方向(約45度)に開口します。直径は約4-6mmで、C5/6およびC6/7レベルで最も狭小化しやすい傾向があります(Tanaka et al., 2000)。
- 胸椎部:小さく円形に近い形状で、ほぼ水平方向に開口します。直径は約4-5mmと最も小さく、肋骨頭の関節面により前方境界が複雑な形態を示します(Panjabi et al., 1991)。
- 腰椎部:大きく垂直方向に伸びた楕円形(洋梨型)を呈し、高さ約15-20mm、幅約8-10mmと最も広大です。下方に向かって漸次狭小化し、L5/S1レベルで最も臨床的問題を生じやすくなります(Lee et al., 1988)。
2. 構成要素と境界
椎間孔の境界構造は以下の解剖学的要素により形成されます:
- 前壁:上位椎体の下後縁、椎間板の後外側部、下位椎体の上後縁で構成されます。椎間板の退行変性による高さの減少は直接的に椎間孔の狭小化をもたらします(Fujiwara et al., 2000)。
- 後壁:上関節突起、下関節突起、および椎間関節包で構成されます。変形性関節症による骨棘形成や関節包の肥厚は後方からの神経根圧迫の主因となります(Hasegawa et al., 2003)。
- 上壁:上位椎骨の下椎切痕(inferior vertebral notch)により形成されます。深さは下位椎骨の上椎切痕より著明に深く、神経根の走行に適した形状を呈します。
- 下壁:下位椎骨の上椎切痕(superior vertebral notch)により形成されます。浅い溝状で、椎弓根の下縁に相当します。
3. 椎間孔内の神経血管構造
椎間孔内には以下の重要な構造が含まれます(Hasegawa et al., 1996):
- 脊髄神経根:前根(運動性)と後根(感覚性)が椎間孔内で合流し、脊髄神経を形成します。神経根は椎間孔の上方部分(zone 1)を通過し、椎間孔高さの上方1/3から1/2を占めます。神経根は硬膜の延長である神経根鞘(nerve root sleeve)に包まれ、椎間孔出口付近で硬膜が終了します。
- 後根神経節(dorsal root ganglion, DRG):通常は椎間孔内または椎間孔出口直後に位置しますが、その位置は個体差が大きく、約15-20%の症例では椎間孔外に位置します(Kikuchi et al., 1981)。DRGは機械的刺激に対して極めて敏感で、圧迫により激しい放散痛を引き起こします。
- 脊髄分節動脈:各分節レベルで1対の分節動脈が椎間孔を通過し、神経根に栄養を供給します。特に根動脈(radicular artery)は神経根に沿って走行し、脊髄前角への血流供給に重要です(Dommisse, 1974)。