鶏冠翼 Ala cristae galli

J0040 (篩骨:少し簡略化された後方からの図)

J0041 (篩骨:上方からの図)

J0042 (右の篩骨迷路:内側からの図)

J0043 (右の篩骨迷路:外側からの図)
解剖学的構造
鶏冠翼は篩骨の鶏冠(crista galli)から派生する重要な解剖学的構造です(Williams et al., 2020):
- 位置:篩骨の鶏冠の前下端に位置し、左右に分かれて翼状の突起を形成します(Standring, 2021)。
- 形態:薄い骨質の板状突起で、鶏の鶏冠に似た形状を呈することからその名称が付けられています(Moore et al., 2018)。
- 関係:前頭骨の前頭稜下端にある盲孔(foramen caecum)を後方から囲み、前篩骨蜂巣と連続しています(Netter, 2019)。
- 境界:篩板(cribriform plate)の前端に位置し、鶏冠の最も前方の部分を構成します(Williams et al., 2020)。
発生学的意義
鶏冠翼は胎生期において以下の重要な役割を果たします(Sadler, 2019):
- 篩骨の化骨中心から発生し、前頭骨との接合部を形成します(Moore et al., 2018)。
- 盲孔の形成に関与し、胎生期に存在した前腸と神経管の交通部位の名残りを示します(Sadler, 2019)。
臨床的意義
鶏冠翼は以下の臨床的場面で重要です:
- 外傷:頭蓋底骨折時に鶏冠翼が損傷されると、硬膜の裂傷や髄液漏出(rhinorrhea)を引き起こす可能性があります(Greenberg, 2020)。
- 手術解剖:経鼻的下垂体手術や前頭蓋底手術において、鶏冠翼は重要な解剖学的ランドマークとなります。特に内視鏡手術では、この構造を損傷しないよう注意が必要です(Kassam et al., 2008)。
- 髄膜腫:鶏冠翼周囲から発生する髄膜腫(olfactory groove meningioma)は、この領域に特徴的な腫瘍で、嗅覚障害や前頭葉症状を呈することがあります(Ojemann et al., 2002)。
- 先天異常:鶏冠翼の形成異常は、前脳胞の発達異常と関連することがあり、正中線欠損症候群の一部として認められることがあります(Sadler, 2019)。
- 脳脊髄液漏:鶏冠翼周囲の骨欠損や篩板の脆弱性は、自然発症性の髄液鼻漏の原因となることがあります(Schlosser and Bolger, 2004)。
画像診断