鼻部(前頭骨の)Pars nasalis (Os frontale)
前頭骨の鼻部は、頭蓋骨の前部において重要な解剖学的役割を果たす構造であり、顔面骨格と神経頭蓋の移行部に位置します。以下に、その詳細な解剖学的特徴と臨床的意義について説明します(Gray, 2020; Standring, 2021)。

J0035 (前頭骨:前方からの図)

J0036 (前頭骨:後方からの図)

J0049 (右鼻骨:外側からの図)

J0050 (右鼻骨:内側からの図)

J0054 (上顎骨:内面からの図)
解剖学的特徴
位置と境界
- 前頭骨の鼻部は、篩骨切痕(incisura ethmoidalis)の前方に位置し、前頭骨の最下部を構成します(Netter, 2019)。
- 正中線において左右の鼻骨(ossa nasalia)と鼻前頭縫合(sutura nasofrontalis)を形成し、外鼻の鼻根部(radix nasi)の骨性支持構造となります(Moore et al., 2018)。
- 眉間(glabella)の直下に位置し、外側では鼻骨、上顎骨前頭突起(processus frontalis maxillae)、涙骨(os lacrimale)と接合します(Drake et al., 2020)。
形態学的特徴
- 前面は平滑で、皮下組織と密接に関連しており、外傷時に骨折のリスクが高い部位です(Standring, 2021)。
- 正中線の両側には鼻棘(spina nasalis)が存在し、鼻中隔の上部を支持する重要な構造です(Sinnatamby, 2022)。
- 内面(頭蓋側)には前頭洞(sinus frontalis)の開口部が存在し、前頭鼻管(ductus nasofrontalis)を介して中鼻道(meatus nasi medius)に連絡します(Gray, 2020)。
- 篩骨切痕の前縁を形成し、篩骨の篩板(lamina cribrosa)と隣接することで、前頭蓋窩(fossa cranii anterior)の前方境界を構成します(Netter, 2019)。
血管分布と神経支配
- 血液供給は、主に眼動脈(arteria ophthalmica)の分枝である前篩骨動脈(arteria ethmoidalis anterior)および滑車上動脈(arteria supratrochlearis)から受けます(Moore et al., 2018)。
- 静脈還流は、顔面静脈(vena facialis)および眼静脈(venae ophthalmicae)を介して行われ、頭蓋内静脈洞との交通があります(Drake et al., 2020)。
- 知覚神経支配は、三叉神経第1枝(眼神経、nervus ophthalmicus)の滑車上神経(nervus supratrochlearis)および前篩骨神経(nervus ethmoidalis anterior)によって行われます(Standring, 2021)。
発生学的特徴
- 前頭骨鼻部は、膜性骨化(ossificatio membranacea)によって形成され、胎生期の前頭骨化骨中心から発達します(Gray, 2020)。
- 出生時には前頭骨は左右に分かれており(前頭縫合、sutura metopica)、通常は生後2歳までに癒合しますが、約10%の成人では残存します(Moore et al., 2018)。