下側頭線(頭頂骨の)Linea temporalis inferior (Ossis parietalis)

J0038 (右の頭頂骨:外側からの図)

J0077 (頭蓋骨、筋の起こる所と着く所:右方からの図)
解剖学的特徴
頭頂骨の下側頭線は、頭蓋骨の外側面に見られる2本の側頭線(上側頭線と下側頭線)のうち、下方に位置する弓状の隆起線です(Standring, 2016)。この線は頭頂骨の外側面を走行し、前方は前頭骨の側頭線へ、後方は後頭骨の上項線へと連続しています(Moore et al., 2018)。
主な解剖学的特徴:
- 頭頂骨の外側面(側頭面)に位置し、上側頭線の約5-10mm下方を平行に走行します(Netter, 2019)
- 側頭筋膜(深層)の付着部位となっています(Standring, 2016)
- 上側頭線との間の領域には側頭筋の起始部があります(Drake et al., 2020)
- 前頭骨、頭頂骨、後頭骨を通って連続する弓状の線を形成します(Moore et al., 2018)
筋・筋膜の付着
下側頭線は側頭筋膜の深層が付着する重要な解剖学的構造です(Standring, 2016)。側頭筋膜は側頭筋を覆う強靭な腱膜で、上側頭線と下側頭線の間で二層(浅層と深層)に分かれます(Shimizu et al., 1992)。この筋膜の付着により、側頭筋の機能的な区画化が行われ、咀嚼運動における効率的な力の伝達が可能となっています(Drake et al., 2020)。
臨床的意義
外科手術での重要性:
- 神経外科手術(開頭術)において、側頭筋の剥離時の重要なランドマークとなります(Yasargil, 1984)
- 側頭開頭アプローチでは、下側頭線を指標として側頭筋膜と側頭筋を適切に処理する必要があります(Rhoton, 2002)
- 頭蓋形成術や頭蓋顔面外科手術における解剖学的基準点として使用されます(Greenberg, 2016)
画像診断:
- CT・MRI検査において、側頭骨と頭蓋内構造の位置関係を評価する際の指標となります(Osborn, 2013)
- 頭部外傷時の骨折線の評価に重要です(Macdonald et al., 2017)
関連する臨床症状: