上側頭線(頭頂骨の)Linea temporalis superior (Ossis parietalis)

J0038 (右の頭頂骨:外側からの図)

J0077 (頭蓋骨、筋の起こる所と着く所:右方からの図)
解剖学的構造
頭頂骨の上側頭線は、頭蓋骨の外側面に存在する2本の側頭線のうち、上方に位置する弓状の隆起線です(Gray, 2021; Standring et al., 2020)。この線は、頭頂骨の外側面を横走し、前方は前頭骨の側頭線に、後方は後頭骨の上項線に連続しています(Netter, 2019)。
位置関係
- 側頭窩(fossa temporalis)の上縁を形成し、側頭部と頭頂部の境界を示す重要な指標です(Sinnatamby, 2011)
- 下側頭線(linea temporalis inferior)の約5-10mm上方に平行して走行します(Moore et al., 2018)
- 矢状縫合から外側方へ約3-4cmの位置に存在します
付着構造
- 側頭筋膜の浅層(lamina superficialis fasciae temporalis)がこの線に強固に付着します(Standring et al., 2020)
- この付着により、側頭筋が収縮する際の支点となり、咀嚼運動において重要な役割を果たします(Drake et al., 2020)
- 帽状腱膜(galea aponeurotica)の外側縁もこの近傍に付着します(Netter, 2019)
臨床的意義
- 外科手術時の重要なランドマーク:側頭開頭術や頭蓋底手術において、上側頭線は皮膚切開や筋肉剥離の指標となります(Yasargil, 1994; Spetzler & Sanai, 2012)
- 頭部外傷の評価:骨折線がこの部位を通過する場合、側頭筋膜の損傷や血腫形成のリスクが高まります(Greenberg, 2019)
- 美容外科領域:側頭部リフト手術や前額部リフト手術において、この線の位置を考慮することで、より自然な仕上がりと合併症の予防が可能です(Ramirez, 2001)
- 頭痛の診断:側頭筋の緊張性頭痛では、上側頭線に沿った圧痛が認められることがあります(Fernández-de-las-Peñas et al., 2007)
発生学的・比較解剖学的観点
上側頭線の発達は、咀嚼筋、特に側頭筋の発達と密接に関連しています(Lieberman, 2011)。ヒトでは直立二足歩行に伴い、脳頭蓋の拡大と顔面頭蓋の縮小が生じたため、他の霊長類と比較して上側頭線はより上方に位置し、側頭筋の付着面積も相対的に小さくなっています(Wood & Lieberman, 2001)。
画像診断での同定