頬骨弓 Arcus zygomaticus

J0284 (右側の顎関節:外側からの図)

J0355 (頭蓋骨:後頭前頭方向からのX線像)

J0357 (頭蓋骨:右左方向からのX線像、軸線は右の外耳道の少し上から入ります)

J0414 (右側の咀嚼筋、背側からやや内側からの図)

J0671 (耳下腺、右側からの図)
頬骨弓は、顔の側面に位置する解剖学的に重要な骨構造です。その解剖学的特徴と臨床的意義について、以下にまとめます(Gray and Williams, 2020; Standring, 2021):
1. 解剖学的特徴
- 頬骨(Os zygomaticum)の側頭突起(Processus temporalis)と側頭骨(Os temporale)の頬骨突起(Processus zygomaticus)が連結して形成される弓状の骨構造です(Netter, 2019)。
- 頭蓋冠の側面から突出し、前方は頬骨体、後方は側頭骨鱗部に連続しています。
- ほぼ水平に位置し、長さは約4〜5cm、後端は外耳道(Meatus acusticus externus)の前方に位置しています(Moore et al., 2018)。
- 側頭頬骨縫合(Sutura temporozygomatica)は頬骨弓の中央部よりやや後方に位置し、前下方から後上方へ斜走しています。
- その下面には咬筋(Musculus masseter)の強力な起始部があり、筋線維が付着しています(Standring, 2021)。
- 頬骨弓と下顎枝(Ramus mandibulae)の間には咬筋間隙(Spatium massetericum)が存在します。
- 弓の上方には側頭筋膜(Fascia temporalis)が付着し、側頭下窩(Fossa infratemporalis)の外側境界を形成します(Drake et al., 2020)。
2. 臨床的意義
2.1 頬骨弓骨折(Zygomatic Arch Fracture)
頬骨弓骨折は顔面外傷の中で比較的頻度の高い骨折です。以下のような臨床的特徴があります:
- **受傷機転:**側方からの直達外力により発生することが多く、交通事故、暴行、スポーツ外傷などが主な原因となります(Ellis et al., 2019)。頬骨弓は皮下に位置し外力を受けやすい構造であるため、比較的軽度の外力でも骨折することがあります。
- **骨折の分類:**頬骨弓単独骨折と頬骨複合体骨折(Zygomaticomaxillary Complex Fracture, ZMC fracture)に大別されます。ZMC fractureは従来tripod fractureと呼ばれ、頬骨弓、眼窩外側縁、眼窩下縁の3箇所で骨折が生じます(Fonseca et al., 2017)。Knight and North分類では、頬骨弓骨折を骨折線の数により6つのグループに分類しています。
- **臨床症状:**頬部の腫脹、圧痛、陥凹変形が主な症状です。骨折により内側に陥没した骨片が下顎骨の筋突起(Processus coronoideus)に接触または衝突することで、開口障害(trismus)が生じます(Miloro et al., 2022)。開口時に骨片が筋突起の運動を機械的に阻害するため、開口度は著しく制限されます。
- **診断:**臨床的には頬部の触診により骨折部の段差や陥凹を確認します。画像診断では、単純X線撮影(ウォーターズ法、サブメンタルバーテックス法)が有用ですが、CTスキャン(特に3D-CT)が骨折の詳細な評価と手術計画に不可欠です(Som and Curtin, 2021)。CTでは骨折線の走行、骨片の転位の程度、副鼻腔への影響などを評価します。
- **治療方針:**転位の少ない骨折や機能障害のない場合は保存的治療が選択されることもありますが、陥凹変形が顕著で開口障害を伴う場合は外科的整復固定術の適応となります(Fonseca et al., 2017)。
2.2 外科的アプローチと手術手技