寛骨部 Coxa

J378.png

J0378 (右の股関節部:脚は伸ばされて少し内側に巻かれ、腹背方向からのX線像)

J379.png

J0379 (右の股関節部:大腿は伸ばされて少し内側に巻かれ、腹背方向からのX線像)

定義と概要

寛骨部(Hip; Coxa)は、体幹と下肢の移行部に位置する解剖学的領域であり、骨盤外側部から大腿骨近位部にかけての範囲を指します(Standring, 2020)。この領域は股関節を中心とした複雑な構造を持ち、直立二足歩行における体重支持と下肢運動の要となる部位です(Moore et al., 2017)。

骨構造

寛骨(Os coxae)

寛骨部の骨格は主に寛骨と大腿骨近位部から構成されます。寛骨は腸骨(Ilium)坐骨(Ischium)、**恥骨(Pubis)**の3つの骨が癒合して形成される大型の扁平骨で、思春期頃にこれらは寛骨臼において完全に癒合します(Netter, 2018)。

腸骨は寛骨の上部を形成し、扇状に広がる腸骨翼(Ala ossis ilii)と、その上縁を形成する腸骨稜(Crista iliaca)を持ちます。腸骨稜は前方の上前腸骨棘(Spina iliaca anterior superior)から後方の上後腸骨棘(Spina iliaca posterior superior)まで延び、触診可能な重要なランドマークです(Moore et al., 2017)。

坐骨は寛骨の後下部を構成し、坐骨結節(Tuber ischiadicum)と坐骨棘(Spina ischiadica)という2つの重要な突起を有します。坐骨結節は座位時に体重を支える構造です(Standring, 2020)。

恥骨は寛骨の前下部を形成し、恥骨体、上枝、下枝から成ります。左右の恥骨は正中で恥骨結合(Symphysis pubica)により結合します(Netter, 2018)。

寛骨臼(Acetabulum)

寛骨臼は腸骨、坐骨、恥骨の3骨が会合する部位に形成される深い半球状の関節窩で、大腿骨頭を受け入れます(Standring, 2020)。寛骨臼の周囲は寛骨臼縁(Limbus acetabuli)によって囲まれ、下方の寛骨臼切痕(Incisura acetabuli)を除いて完全な環を形成します。

寛骨臼の中央部には寛骨臼窩(Fossa acetabuli)という粗面があり、ここには関節軟骨は存在せず、脂肪組織と大腿骨頭靱帯が付着します。実際に大腿骨頭と接する関節面は月状面(Facies lunata)と呼ばれる馬蹄形の軟骨面です(Moore et al., 2017)。

大腿骨近位部

**大腿骨頭(Caput femoris)**は半球状の構造で、その中央やや下方には大腿骨頭窩(Fovea capitis femoris)という小さな陥凹があり、大腿骨頭靱帯が付着します(Netter, 2018)。

**大腿骨頸(Collum femoris)**は大腿骨頭と大腿骨体を結ぶ細い部分で、大腿骨体の長軸に対して約125度(頸体角)の角度をなし、前方に約10-15度前捻しています(前捻角)。この角度は直立二足歩行に適応した構造です(Standring, 2020)。

**大転子(Trochanter major)**は大腿骨近位外側の大きな突起で、多くの股関節外転筋・外旋筋が付着します。内側面には転子窩(Fossa trochanterica)があり、外旋筋が付着します(Moore et al., 2017)。

**小転子(Trochanter minor)**は大腿骨後内側の突起で、腸腰筋が付着する重要な部位です(Netter, 2018)。

大転子と小転子の間は、前方では転子間線(Linea intertrochanterica)、後方では転子間稜(Crista intertrochanterica)によって結ばれます(Standring, 2020)。

股関節(Articulatio coxae)