手背 Dorsum manus

手背(てのこう)とは、手首と中手部の背側(掌側の反対側)を指します。解剖学的には、手の背側面で手根骨から中手骨、指骨の基部にかけての領域です(Gray, 2020)。

解剖学的特徴 手背は薄い皮膚と皮下組織で覆われており、静脈や腱が表面から容易に観察できます(Moore et al., 2018)。主要構成要素として:

  1. 骨構造:手根骨(8個)と中手骨(5本)の背側部分(Netter, 2019)
  2. 伸筋腱:指伸筋腱が手背を走行し、指の伸展を担う(Standring, 2021)
  3. 背側中手間筋:中手骨間に位置する小さな筋群(Drake et al., 2019)
  4. 血管系:手背静脈網(venous network)が特徴的で、採血などの医療処置でよく利用される(Agur and Dalley, 2017)
  5. 神経支配:主に橈骨神経浅枝と尺骨神経背側枝が分布(Tubbs et al., 2016)

臨床的意義 ・静脈穿刺:手背静脈は静脈注射や採血の一般的な部位(Friedman and Skalak, 2018) ・外傷:手背部の皮膚は比較的薄く、打撲や裂傷を受けやすい(Resnick and Danzig, 2020) ・浮腫:心不全や腎疾患などによる全身性浮腫の早期徴候が手背に現れることが多い(Kumar and Clark, 2017) ・伸筋腱損傷:手背部の伸筋腱損傷は指の伸展障害をもたらす(Green et al., 2017) ・手根管症候群:手背側からのアプローチが治療に用いられることがある(Wolfe et al., 2018)

参考文献

書籍

雑誌

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J0945 (右手背の神経)

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J0951 (右手背の皮神経:通常の配置)

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J0952 (右手背の皮膚神経:橈骨神経浅枝が強く発達している場合)

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J1080 (左手の甲(尺骨部分)の表面の皮膚の溝と領域)

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J1079 (左手の甲(尺骨部分)の表面の皮膚の溝と領域)