


J0952 (右手背の皮膚神経:橈骨神経浅枝が強く発達している場合)


手背(てのこう、Dorsum manus)とは、手首と中手部の背側(掌側の反対側)を指します。解剖学的には、手の背側面で手根骨から中手骨、指骨の基部にかけての領域です(Gray, 2020)。
手背は薄い皮膚と疎性結合組織からなる皮下組織で覆われており、静脈や腱が表面から容易に観察できます(Moore et al., 2018)。皮膚の薄さは掌側と比較して顕著であり、これが臨床的な特性に影響を与えます(Standring, 2021)。
手背の骨格は手根骨(8個)と中手骨(5本)の背側部分から構成されます(Netter, 2019)。手根骨は近位列(舟状骨、月状骨、三角骨、豆状骨)と遠位列(大菱形骨、小菱形骨、有頭骨、有鉤骨)の2列に配置され、中手骨はそれぞれ第1〜5指に対応します(Drake et al., 2019)。
手背には伸筋腱群が走行し、指の伸展運動を担います(Standring, 2021)。具体的には、総指伸筋腱、示指伸筋腱、小指伸筋腱が手背を縦走し、各指の基節骨に付着します(Moore et al., 2018)。また、背側中手間筋(4個)が中手骨間に位置し、指の外転と屈曲に関与します(Drake et al., 2019)。
手背の静脈系は特に発達しており、手背静脈網(dorsal venous network)が特徴的です(Agur and Dalley, 2017)。この静脈網は橈側皮静脈と尺側皮静脈に集合し、前腕へと続きます(Netter, 2019)。動脈系では、橈骨動脈と尺骨動脈の背側枝が手背動脈網を形成し、中手動脈を介して指への血液供給を行います(Moore et al., 2018)。
手背の感覚神経支配は主に橈骨神経浅枝と尺骨神経背側枝によって行われます(Tubbs et al., 2016)。橈骨神経浅枝は手背の橈側2/3の皮膚を支配し、尺骨神経背側枝は尺側1/3を支配します(Standring, 2021)。運動神経支配に関しては、背側中手間筋は尺骨神経の深枝によって支配されます(Drake et al., 2019)。
手背静脈網は表在性で触知しやすく、静脈注射や採血の一般的な部位として利用されます(Friedman and Skalak, 2018)。特に末梢静脈カテーテル挿入において、手背静脈は第一選択となることが多いです(Friedman and Skalak, 2018)。
手背部の皮膚は比較的薄く、皮下組織も少ないため、打撲や裂傷を受けやすい部位です(Resnick and Danzig, 2020)。特に伸筋腱の損傷は手背外傷で頻繁に見られ、適切な評価と治療が必要となります(Resnick and Danzig, 2020)。