左 Sinister
左(Sinister)は解剖学における最も基本的な方向を示す用語の一つで、身体の正中矢状面(median sagittal plane)を基準として左側に位置する全ての構造を指します(Moore et al., 2018)。解剖学的正位(anatomical position)において、被検者自身から見た左側、すなわち観察者からは右側に相当する方向を意味します(Standring, 2020)。

J0012 (腰椎、椎体:前面断図)

J0013 (13a. 腰椎の体の水平断面、13b. 脱灰され、透明な第4腰椎:上方からの図)
解剖学的定義
左側(sinister)は以下の特徴を持ちます:
- 身体を正中矢状面で分けた際の左半分に位置する全ての構造
- 対になっている器官(paired organs)において左側に存在するもの
- 左右非対称な単一器官における左側の部分
主要な左側構造
循環器系:
- 左心房・左心室:体循環を担う心臓の主要ポンプ機能を持つ(Netter, 2018)
- 左冠動脈:左前下行枝と左回旋枝に分岐し、心筋の大部分に血液を供給(Drake et al., 2019)
- 左鎖骨下動脈:左上肢への主要血管
消化器系:
- 脾臓:左上腹部、左季肋部に位置する免疫・造血器官(Moore et al., 2018)
- 胃:主に左上腹部に位置し、噴門部から胃体部、胃底部の多くが左側
- 膵臓の体部・尾部:左上腹部に伸びる
- 左結腸:下行結腸とS状結腸を含む
呼吸器系:
- 左肺:上葉と下葉の2葉からなり、心臓の存在により右肺より小さい(Standring, 2020)