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蝸牛管の基本構造
各壁の特徴
蝸牛管には3つの壁がある。鼓室階側の壁、前庭階側の壁、および外側壁である。
a)前庭階側の壁は前庭階壁Membrana vestibularis(ライスネル膜Reissnersche Haut)とよばれ、薄くて繊細な膜であるが、肉眼で確認することができる(図700(蝸牛管の第2回転における横断面の拡大図)、図707(蝸牛管第2回転の強拡大図) )。
この膜は2つの固定線(内方のラセン縁Limbus spiralisと外方の蝸牛管外側壁の骨膜)の間にまっすぐに張られており、内方の上皮層と外方の結合組織層から構成される。結合組織は微量だが微細線維性で、そのため膜にはわずかな条理が見える。外面は内皮細胞で覆われている。薄い結合組織層には成人では血管は存在しないが、初期の血管の痕跡が残存することがある。内面の上皮は多角形の単層扁平上皮で、表皮の胚芽層最深層と同様に、しばしば黄色の色素粒子を含んでいる。
b)蝸牛管の外壁は骨膜と密接に結合している。この壁は**[蝸牛]ラセン靱帯**Lig. spirale cochleae(後述)の上方への放散と、血管条Stria vascularisという層で構成される。血管条は軟らかく血管が豊富で、わずかに隆起しており、蝸牛管の内リンパを分泌する。血管条の内面は蝸牛管の上皮で覆われている。
鉛直方向の断面では、血管条の内面は凹凸不整である。特に下方の隆起は恒常的に存在し、ラセン隆起Prominentia spiralisと呼ばれる。血管条の上皮は背が高く、前庭膜の上皮と同様に色素粒子を含む。血管条には血管が極めて豊富で、特に蛇行する多数の毛細管があり、その一部は血管条表面の直近まで達して、上皮細胞間に侵入する。すなわち、ここでは上皮内(上皮細胞間)interepithelialに血管が存在する。
c)蝸牛管の下壁は鼓室階との境界をなす壁で、最も注目すべき特徴を有する。この壁は内方部(蝸牛軸寄り)と外方部に区分される。内方部はラセン縁Limbus spiralisと骨ラセン板の鼓室唇Labium tympanicumから構成される。外方部は膜ラセン板とその付属構造物からなる。両部の内外方向の幅は回転により異なり、蝸牛管下壁の全幅は蝸牛頂回転に近づくほど増大する。