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片山正輝

目次(V. 神経系)

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図524(交感神経幹上部・舌咽神経・迷走神経・副神経・舌下神経)

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図527(右側の迷走神経と交感神経の頚部、胸腔、および腹腔上部における分枝)

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図570(胸部の自律神経系)

下頚部の2つの神経節からの枝は、これらの神経節自体と同様に、通常はその全体を明確に区別することが困難である。これらの枝は上頚神経節と中頚神経節からの枝とよく似ている。

a) 節間枝(Rami intergangliares)

b) CVI、CVII、CVIIIとの交通枝

c) 下甲状腺動脈に至る枝および椎骨動脈に達する多数の枝。後者は椎骨動脈の周囲に椎骨動脈神経叢を形成する。この神経叢は発達が良好で、頚神経との間に結合を持つ。この結合は下部の頚神経でより発達しており、椎骨動脈神経叢が肋横突孔を通過する際にこれに到達する。この神経叢は椎骨動脈とともに上方へ走り、この動脈の脳に分布する枝にまで及ぶ。

d) 鎖骨下動脈とその枝に達する神経は鎖骨下動脈神経叢(Plexus subclavius)を形成する。この神経叢は鎖骨下動脈の枝に沿って続き、また少数の小枝を胸膜頂に送る(Braeucker 1927)。この神経叢および下頚神経節からはかなり太い1本の枝が出て甲状腺に達する。これが下甲状腺神経(N. thyreoideus caudalis)(Braeucker 1923)である。この枝から1本の細い枝が出て下上皮小体に達する。

e) 内胸動脈(A. thoracica interna)の周囲には内胸動脈神経叢(Plexus thoracicus internus)がある。

f) 下心臓神経(N. cardiacus caudalis)は下頚神経節から出る。

g) 最下心臓神経(N. cardiacus imus)は第1胸神経節から出る(この心臓神経の存在に関しては異論がある)。

f)およびg)は互いに合して1つの共通な幹を形成することがある。左のものは大動脈弓の後方を、右のものは腕頭動脈の後方を通り、短い経過の後に両側とも深心臓神経叢に達する。

心臓神経叢(Plexus cardiacus)

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図527(右側の迷走神経と交感神経の頚部、胸腔、および腹腔上部における分枝)

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図569(ヒトの心室筋における神経)

心臓神経叢には迷走神経の幹および上下の喉頭神経(あるいは肺神経叢)から発する心臓枝(Herzäste)、ならびに両側の交感神経の上・中・下3つの頚神経節と上方の5個の胸神経節(Braeucker 1927)から発する心臓枝が集まっている。

時として存在する舌下神経(N. hypoglossus)からの心臓枝については上述の484頁を参照されたい。両側の心臓枝の数と太さは左右で著しく異なることがある。また心臓神経の数、太さ、出方、結合も個体差が大きい。例えばBraeucker(1927)は第6胸神経節の1枝までも心臓神経叢に達しているのをしばしば観察した。しかし、これらの顕著な差異は実際には表面的なものにすぎない。

両側の心臓神経は胸腔に入る際に互いに近づき、多数の吻合によって網目の広い網状の心臓神経叢(Plexus cardiacus, Herzgeflecht)を形成する。これには浅層(oberflächliche Schicht)と深層(tiefe Schicht)が区別されるが、両者は密接に連結している。

  1. 浅心臓神経叢(Plexus cardiacus superficialis, oberflächliches Herzgeflecht)は主に上部の心臓神経によって形成され、どちらかというと左側に広がる。大動脈弓の凹側縁と肺動脈の左右に分かれる部分を覆い、この場所に2つに分かれた神経節あるいは(より大きな)単一の神経節、すなわち心臓神経節(Ganglion cardiacum)を持つ。なお、この神経節が顕微鏡的な大きさで、肉眼では識別できないこともある。
  2. 深心臓神経叢Plexus cardiacus profundus:浅心臓神経叢よりも右方かつやや上方に位置し、大動脈弓のすぐ後方で大動脈弓と気管分岐部の間、肺動脈より上方にある。この深心臓神経叢は浅心臓神経叢と比べてより緻密な網を形成しより発達している

心臓神経叢の浅層と深層の両部分から、様々な方向に結合枝と末梢枝が出ている。