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片山正輝

目次(V. 神経系)

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嗅脳の後方部は嗅野(Area olfactoria)です。その表面は平坦で灰白色を呈し、多数の血管貫通孔が存在します。嗅野の灰白質は背側でレンズ核と連続しています。嗅野が位置する浅い陥凹は外側大脳谷(Vallecula cerebri lateralis)と呼ばれます。

嗅三角(Trigonum olfactorium)は浅い溝によって嗅野から分離されています。ここから嗅溝(Sulcus olfactorius)という深い溝が前頭葉に属して前方に4cm延びており、嗅脳の最前方の2構造、すなわち嗅索(Tractus olfactorius)と嗅球(Bulbus olfactorius)がこの溝内に位置しています(図409(脳底)図417(脳底の図)図420(脳幹と脳神経を示す図))。嗅球は長さ8~10mm、幅3~4mm、厚さ2~3mmの膨らんだ灰白色の構造です。ここから多数の嗅糸(Fila olfactoria)が出て、鼻腔の嗅部粘膜に達します。

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図409(脳底)

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図417(脳底の図)

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図420(脳幹と脳神経を示す図)

嗅索は3つの稜を持ち、2本の白い髄質の条を示しています。これらは内側嗅条(Stria olfactoria medialis)と外側嗅条(Stria olfactoria lateralis)です(図420(脳幹と脳神経を示す図))。

内側嗅条は嗅三角の内側稜に沿って嗅傍野(Area adolfactoria)に達します。一方、外側嗅条は嗅三角の外側稜に沿って外側大脳裂の入口に達し、そこで島限(Limen insulae)を形成して海馬傍回の前端部に至ります。内側嗅条と外側嗅条の間にある中間嗅条(Stria olfactoria intermedia)は嗅野の実質内で消失します。

**変異:**日本人の嗅球の大きさは、成人では長さ10.42±0.05mm、幅は男性5.97±0.03mm、女性4.48±0.04mm、高さ2.27±0.03mmである。新生児ではそれぞれ9.45±0.16mm、4.20±0.10mm、2.00±0.05mmである(小川鼎三、細川宏:日本人の脳。104、1953)。

嗅脳は全部または一部が欠如していることがある。1929年までに約13例が報告された。そのような症例では、篩板が小さく、矢状方向に縮小したトルコ鞍に小さな下垂体が存在し、甲状腺も小さく、類宦官症の体型が見られた(Mirsalis, Anat. Anz., 67. Bd., 1929)。

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[図432] 脳、前額断面III:中間質を通る切断面。後方の断面を前から観察。(9/10)

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[図433] **脳、前額断面IV:**後交連の直前で切断し、後方の切断面を前方から観察する。(9/10)