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(図099(胸部と腹部の内臓の位置) 、図113(腺腹)、図114(十二指腸と膵臓)、図125(ヒトの十二指腸上部の縦断面)、図159(腹部内臓の位置関係 III. 腹腔後壁の左半を観察する)、図160(腹部内臓の位置関係IV. 腹腔後壁の観察)、図164(腹部内臓の位置関係V)、図166(十二指腸・膵臓・脾臓および後腹壁の諸器官の自然な位置を示す図) )
図159(腹部内臓の位置関係 III. 腹腔後壁の左半を観察する)
図166(十二指腸・膵臓・脾臓および後腹壁の諸器官の自然な位置を示す図)
十二指腸の長さは約30cmである(大沢岳太郎『大沢新撰解剖学2巻』1934年によると、日本人の十二指腸の長さは約25cm。また鈴木文太郎『人体系統解剖学3巻上』1920年によると、硬化した死体で測定した場合、男性の平均24.9cm、女性の平均22.7cm。直径は男性3.7cm、女性2.7cm)。幅は4~6cmで、馬蹄形の大きな弓を描き、そのくぼんだ側が膵臓の頭部を抱えている(図114(十二指腸と膵臓)、図164(腹部内臓の位置関係V)、図166(十二指腸・膵臓・脾臓および後腹壁の諸器官の自然な位置を示す図))。十二指腸は3部に分けられる(図164(腹部内臓の位置関係V)、図166(十二指腸・膵臓・脾臓および後腹壁の諸器官の自然な位置を示す図))。
第1の部は上部(Pars cranialis)と呼ばれ、最も短く4~5cmの長さがある。幽門から始まり、軽く上後方かつ右方に進み、胆嚢の頚部に達する。ここで急に上十二指腸曲(Flexura duodeni cranialis)を形成して曲がり、下行部(Pars descendens)に移行する。この第1部は十二指腸の中で最も自由に動くことができ、両側を腹膜に覆われている。この部分の後ろを胆管が通り、また肝臓への血管も通っている。
下行部は上部の2倍の長さがあり、胆嚢の頚部から始まる。右腎臓の表面左側および下大静脈の表面を下方に進み、第3または第4椎の高さに達する。ここで下十二指腸曲(Flexura duodeni caudalis)を形成して下部(Pars caudalis)に移行する。下行部は前面のみが腹膜に覆われている。下行部の前面を横行結腸と横行結腸間膜が通過する。横行結腸間膜の根によって覆われている部分を十二指腸の被覆部(Pars tecta duodeni)という。下行部の左側に膵臓の頭部が接している。総胆管は下行部の左縁の後ろを下方に進み、膵管(これは短い距離だけ総胆管と伴走する)とともに徐々に腸壁を貫く。そのため、下行部の粘膜に十二指腸縦ヒダ(Plica longitudinalis duodeni)という縦の隆起ができており、その下端を**[大]十二指腸乳頭**(Papilla duodeni major)という。ここに総胆管と膵管が共同で開口する。この乳頭は幽門から約10cm離れている。ここに開く管の終端がしばしばやや膨らんでおり、以前はこれをファーテル憩室(Diverticulum Vateri)と呼んでいた。十二指腸の粘膜が作る横走するヒダの1つが、その開口部を覆うように横切っている(図114(十二指腸と膵臓))。
全症例の96%において(Keyl 1925)、大十二指腸乳頭の上方2.3cmの位置に副膵管の開口がある。そこは実際には乳頭と呼べるほどの隆起をしていないことが多いが、小十二指腸乳頭(Papilla duodeni minor、Santorini)と呼ばれる。—Keyl, R., Morph. Jahrb., 55. Bd., 1925.
下部(Pars caudalis)は十二指腸の中で最も狭いが最も長い部分であり、右から左に進み、また斜め上方に向かっている。第2腰椎の左側面に達する(ここを上行部Pars ascendensという)。第1腰椎体の下縁の高さで、十二指腸空腸曲(Flexura duodenojejunalis)という鋭い曲がりを形成して、空腸に移行する。
上腸間膜動脈の周囲を包む密な結合組織から1本の索が出て十二指腸空腸曲に達し、その位置の固定に役立っている。この索は結合組織と平滑筋(十二指腸懸垂筋 M. suspensorius duodeni)からなっている。図113(腺腹)
十二指腸の血管は上下の膵十二指腸動脈(Aa. pancreaticoduodenales cranialis et caudalis)から供給される。リンパ管は膵頭の前方と後方にあるリンパ節に至り、そこから腹腔リンパ節へ流入する。
局所解剖:
I. 全身に対する位置関係:十二指腸は中腹部(Regio abdominis media)の臍部(Pars umbilicalis)に位置し、一部は上腹部(Regio abdominis cranialis)の内側部(Pars medialis)にも及ぶ(第1巻RK149(**人体の諸部分:**前面)を参照)。
II. 骨格に対する位置関係:十二指腸は第12胸椎体から第3腰椎体の高さに及ぶ。下行部は椎体の右側面に接し、下部は斜め上方に向かって第3および第2腰椎体の前を越えて左方へ進む。十二指腸空腸曲は第1腰椎体の下縁の左側に接している。
III. 近接器官との位置関係:十二指腸は肝臓、胆嚢、右腎臓、および右腎上体に接触し、膵臓の頭部を取り囲んでいる。また、下大静脈と腹大動脈の前を通過し、十二指腸自体が上腸間膜動静脈と交差する。上部の後方には門脈、総胆管、胃十二指腸動脈がある。下行部の表面を横行結腸間膜の根が横切り、下部の表面を小腸間膜根が上腸間膜動静脈とともに通過している。
生体内では、十二指腸は外部の影響を受けやすい特性がある。体位、呼吸、腹筋群の働きにより、十二指腸は2つの椎体の高さにわたって上下に移動する(I. 胃 Ventriculus; Gaster, Magen の胃の項を参照)。Vogtの研究によると、高齢者(69歳から85歳)では十二指腸が第4または第5腰椎の高さまで、時には岬角にまで下降することが確認されている(Vogt, Verh. anat. Ges., 1920, 1921. - Pernkopf, E., Z. Anat, Entw., 97. Bd., 1932)。
[図113]腺腹(Drüsenbauch):腹腔の上部を指す。これに対し、腹腔の中部と下部を合わせて腸腹(Darmbauch)という。図は腹腔内の主要な腺を示している。上方に反転させた胃、十二指腸、太い血管幹、および左右の腎臓が描かれている。(縮尺 3/5)
[図114]十二指腸と膵臓(9/10)
十二指腸の前壁を一部除去してある。肝臓と膵臓の導管が前方から見えるよう、膵臓の一部も切除してある。
[図115]空腸:アルコールを内部に充填して腸を固定し、その後壁を切開したもの。ケルクリング襞が観察される。
[図116]回腸:アルコールを内部に充填して腸を固定し、その後壁を切開したもの。孤立リンパ小節が観察される。
[図117]胃と十二指腸と空腸:レントゲン像(背腹方向の撮影)。ケルクリングヒダが非常に明瞭に観察される。(C. ElzeとG. Ganterによる)