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片山正輝

目次(V. 神経系)

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交感神経系の主要構造と結合

内臓神経の構造と機能

交感神経系の胸神経節と腰神経節は連鎖状を形成しており、以下の枝および結合が見られる:

1.節間枝(Rami intergangliares):個々の神経節間の縦方向の結合を媒介する。

2.交通枝(Rami communicantes):2〜4本存在し、脊髄神経との結合を形成する。

3.縦隔枝(Rami mediastinales):胸大動脈に達する複数の枝。これらは胸大動脈の周囲に胸大動脈神経叢(Plexus aorticus thoracicus)を形成する。この神経叢は上方で心臓神経叢(Plexus cardiacus)からの末梢への広がりとして大動脈に達するものとつながり、下方では横隔膜の大動脈裂孔を通って大動脈とともに腹腔に入り、腹腔神経叢(Plexus coeliacus)と結合する。Braeucker(1927)によれば、縦隔枝の線維は交感神経幹の神経節と特別な関係を持たず、単にそこを貫通するのみだという。交感神経の腹部からも枝が出ており、その一部は腎神経叢(Plexus renalis)に達するが、大部分は腹大動脈神経叢(Plexus aorticus abdominalis)と上直腸神経叢(Plexus rectalis cranialis)に達する。

4.肺神経叢(Plexus pulmonalis)への追加枝。

5.大内臓神経(N. splanchnicus major):第6から第9までの胸神経節はそれぞれ1本の枝を内側かつ下方に出す。これは脊髄神経の性質を持つ髄質様の白色を呈する枝である(図527(右側の迷走神経と交感神経の頚部、胸腔、および腹腔上部における分枝)図570(胸部の自律神経系)図571(成人の腹腔神経叢))。これらの枝は徐々に集合して1本のかなり太い神経となる。これが大内臓神経であり、胸膜に覆われて椎体の上を下方に走る。その際、多数の縦隔枝を大動脈神経叢、縦隔神経叢、および壁側胸膜の縦隔部に与え(Braeucker 1927)、横隔膜の腰椎部を(縦胸静脈とともに)貫いて腹腔に入り、腹腔神経節に達する。横隔膜を貫く直前に、この神経には内臓神経神経節(Ganglion splanchnicum)という小さな神経節が接着している。これは内臓神経の線維の一部を受け取り、細い小枝を大動脈神経叢に送る。また、比較的長い1本の小枝がこの神経節から出て横隔膜を貫き、腹腔神経叢(Plexus coeliacus)に達している。大内臓神経はその有髄神経線維を第4から第9までの胸神経の交通枝から受ける。これらの神経線維は交感神経幹に達し、その内側面に沿って下方に走り、やがてこれから分かれて大内臓神経の根となる。しかし、大内臓神経は純粋な脊髄神経ではなく、交感神経性の線維も含んでいる。Rüdingerによれば、無髄線維の有髄線維に対する割合は1:5である。大内臓神経は、(腸の血管への)血管運動性(vasomotorisch)線維、(腸壁の筋への)運動性(motorisch)線維、および受容性の線維から成る。運動性線維の一部は腸の蠕動運動を抑制するため抑制神経の性質を持つが、別の一部はその興奮によって腸の蠕動運動を促進させる

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図527(右側の迷走神経と交感神経の頚部、胸腔、および腹腔上部における分枝)

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図570(胸部の自律神経系)

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図571(成人の腹腔神経叢)

6.小内臓神経(N. splanchnicus minor)(図527(右側の迷走神経と交感神経の頚部、胸腔、および腹腔上部における分枝)図570(胸部の自律神経系)図571(成人の腹腔神経叢)):通常2根を持って交感神経幹から発し、それは第10と第11の胸神経節から起こる。その線維の由来は概ね大内臓神経について述べたのと同様と考えられる。小内臓神経は横隔膜を大内臓神経と一緒に貫くこともあれば、それより外側で貫くこともある。いずれにせよ交感神経幹よりは内側である。胸腔内では時に大内臓神経と合流することもあるが、通常は独立しており、このときは単に結合枝を大内臓神経に送るのみである。最終的に小内臓神経は腎動脈の根の上面と後面を取り巻く腹腔神経叢の一部に入り、ここで小さなGanglion renaliaorticum(腎動脈大動脈神経節)と結合する(図571(成人の腹腔神経叢))。小内臓神経の1枝は腎枝(Ramus renalis)と呼ばれ、直接腎神経叢に達する。この枝が独立して交感神経幹から発することもあり、その場合はN. splanchnicus minimus s. imus(最小あるいは最下内臓神経)と呼ばれる。