人の歯の形成に見られる変異性は広範ではないが、その意味は大きい。個々の歯によく見られる異常については、すでにその形態を述べる箇所(1420頁)で触れた。ここでは、前に記さなかったいくつかの特殊な点を挙げる。

咬頭の一部が欠如していることがある。また、完全な1本の歯の代わりに退化した歯が存在することがあり、これは多くの場合円錐状で、栓状歯(Embolus)と呼ばれ、下等脊椎動物の歯の形を想起させる。第3大臼歯が退化的発達を示すことと、その意味については既に述べた。歯数の減少はまれだが時に見られる。例えば、1つの顎に4本あるはずの切歯が3本しかない場合がある。このとき1本が正中に位置する。歯の発育不全は、しばしば毛髪の異常形成(過多または過少)を伴う。

歯の埋伏(Retention)は特に上顎犬歯で比較的多く見られる。歯数の増加もまれである。より多いのは見かけの増加(scheinbare Vermehrung)で、これは乳歯の1本が脱落せずに残り、代生歯がその近くで萌出している状態である。第3切歯や第4大臼歯の出現は非常にまれである。第4大臼歯は広鼻猿(Platyrrhini)では正常だが、狭鼻猿(Catarrhini)は人と同じ歯式を持つ。様々な型の顎骨裂(Kieferspalte)の場合、時に歯数が変化し、通常より増加することさえある。まれに、老人に代生歯の形成が再度様々な程度で起こることがある(老人性生歯 Dentitio senilis)。