各顎の左右半分に8本ずつ永久歯が形成される。これは乳歯より3本多い。永久歯は代生歯(Ersatzzähne)と加生歯(Zuwachszähne)に分類される。前方5本は乳歯を置き換える代生歯で、歯堤から生じる第2列の歯として発生する。一方、大臼歯である加生歯は歯堤の後方に延びる部分から直接形成され、第1列の歯に属する。

代生歯の数に応じて5つの代生歯小嚢が形成される。これらは前方から後方へ順次発生し、成長するにつれて乳歯小嚢の舌側(内側)の顎骨内に進入する。上顎の代生歯は上内方へ、下顎は下内方へ進む。最終的に、新しい小嚢は乳歯の歯槽底にある特殊な窪みに収まる。

代生歯が伸長すると、特にその上方にある乳歯の根に持続的な圧力をかける。その結果、この部分が徐々に吸収される(図055(脱落した乳歯)、056(3歳児の下顎左半:内側からの図))。多数の巨大細胞(破骨細胞、Osteoklasten)がこの吸収過程に関与する。最終的に乳歯は薄い狭い縁で歯肉とつながっているだけとなり、外部からの力で事前に除去されなければ、永久歯の萌出により押し出されて脱落する。

加生歯は各顎半分の後方3本の歯で、独自の歯小嚢および歯槽内で発達する。

第1大臼歯の原基は胎児期第15週に形成され、歯小嚢に包まれる。続いて第2大臼歯の歯胚が生じるが、その歯乳頭の出現は生後7か月頃である。さらに歯堤上皮が再度芽を出し、同様の過程で第3大臼歯が形成されるが、これはかなり後の時期となる。第3大臼歯の歯冠形成開始は6歳頃である。稀に第4大臼歯の原基も形成され、完全に発達して萌出し機能することさえある。永久歯の石灰化は第1大臼歯から始まり、下顎が上顎よりやや早い。上顎第1大臼歯は生後5〜6か月で石灰化し、内側切歯はそれよりやや遅れる。外側切歯と犬歯は生後8〜9か月、第3大臼歯は約12歳で石灰化する。

永久歯の長さの成長は乳歯について述べたのと同様の過程で進行する(3132頁)。

永久歯の萌出の時期と順序については、模型図(図053(乳歯の発生模型図)、054(永久歯の発生模型図)図057(永久歯の萌出を示す模型図) )に示されている。

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[図5354]乳歯と永久歯の発生模型図

図53は永久歯、図54は乳歯を示す。横線は、左側に記された年齢時点での各歯の形成状態を表している(E. Ballowitzの表に基づく)。

上下の歯の第2歯式 zweite Formel des menschlichen Gebisses

乳歯を考慮に入れた場合、人の歯式は以下のように補足される必要がある。成長する上下顎において、乳歯があった場所に20個の代生歯が現れ、その後方にさらに12個の歯が形成される。後者の解釈には諸説あり、乳歯に相当しない「第2次の歯(Zähne der zweiten Folge)」とみなされることもあれば、代生歯を欠く「第1次の歯(Zähne der ersten Folge)」と考えられることもある。後者の解釈がより自然であろう。したがって、各側の顎半分は次のように表される。

乳歯

第1次 J J C M M M M M
I II I I II III IV V =8
第2次 I II I I II
J J C PM PM

代生歯

第3の見解では、歯の第1次と第2次の区別は当初からの現象ではないとされる。この説によれば、哺乳動物の進化過程で顎が短縮し、元来多数存在した歯が1列に収まりきらなくなった。その結果、一部の歯が押し出され、これが代生歯の列として現れたという。

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[図55]脱落した乳歯 ×1