出産時、前方の乳歯の歯冠はすでに形成されており、両顎内で歯小嚢に包まれ、歯根の形成が始まっている。

左右各半の歯列は、それぞれの顎半分が持つ5つの歯槽内に位置する。さらに、永久歯の第1大臼歯用の第6番目の歯槽があるが、これはまだ独立しておらず、乳歯の第2大臼歯の歯槽と連続している。また、永久歯の内外両切歯、犬歯、第1小臼歯の歯小嚢を収める4つの窪みがある(図050(新生児の上顎における歯槽窩と歯胚)図051(新生児の下顎における歯小嚢))。

乳歯の萌出は規則正しい順序で起こるが、対をなす各歯の出現時期には個体差がある。乳歯の萌出は生後約7か月に始まり、多くは2歳の終わりまでに完了する(図052(乳歯の萌出を示す模型図)図057(永久歯の萌出を示す模型図))。

乳歯が出る前、歯肉にはいくつかの特徴的な変化が見られる。まず歯肉の自由縁が密になり鋭くなる。次にその鋭い角が消え、歯肉の縁が丸くなり膨らむ。そして青みがかった赤色を呈する。その後、歯の先端が白い点または線として血管に富む歯肉を通して見えてくる。間もなく歯が萌出する。歯冠が徐々に露出する間、すでに伸長した歯根の周囲に骨性の壁が形成され、歯槽内に固定される。萌出前の粘膜内には多数の小さな白い構造物が見られる。これは歯堤の残りで、酒石腺Glandulae tertaricae s. dentalesまたは上皮真珠Epithelperlenと呼ばれる。これは上皮細胞の塊で、角化して固くなったものである(図048(乳歯および永久歯の原基))。

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[図52]乳歯の萌出を示す模型図(H. Welcker作)

図の右側は乳歯の平均萌出月齢(生後月数)を、左側は萌出順序を示している。

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[図5859] 6歳児の両顎に残存する乳歯と永久歯(9/10スケール)

図58は前方から、図59は側方からの視点を示す。永久歯は黄色で着色されている。