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目次(VI. 感覚器)

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鼓室の陥凹

血管・神経支配

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図676(左側鼓膜の内面、ツチ骨およびキヌタ骨)

α)鼓室上陥凹Recessus epitympanicusまたはAtticus(屋根裏部屋の意)は中耳の上部であり、中耳の天井から鼓膜張筋の腱の高さまでの範囲を指す。鼓室上陥凹にはツチ骨の小頭とキヌタ骨の体が存在する。この陥凹の側壁は側頭鱗に属し、その鼓膜切痕のある部分によって形成される。後方は乳突洞口に移行し、多くの学者は乳突洞口自体も鼓室上陥凹に属すると考えている。

β)上鼓膜陥凹Recessus membranae tympani superiorまたはプルサク腔Prussakscher Raumは漏斗状の空所である。その内側境界はツチ骨の頭と頚、およびキヌタ骨の体によって形成され、外側壁は鼓膜の弛緩部と鼓膜切痕を有する側頭鱗部によって構成される。

γ)前鼓膜陥凹Recessus membranae tympani anteriorは鼓膜と前ツチ骨ヒダの間に位置する。

δ)後鼓膜陥凹Recessus membranae tympani posteriorは後ツチ骨ヒダと鼓膜の間に位置する。

鼓室の動脈は以下の血管から構成される:茎乳突孔動脈からの後鼓室枝R. tympanicus posterior、中硬膜動脈の浅錐体枝R. pyramidis superficialisからの上鼓室枝R. tympanicus superior、内頚動脈からのRamulus caroticotympanicus(頚鼓小管小枝)、および前・下鼓室動脈Aa. tympanicae anterior et inferior。比較的太い血管は結合組織の深層を走行し、表層は毛細血管が豊富である。鼓室小骨にもこれらから細い血管が進入している。

静脈は中硬膜静脈と咽頭静脈叢に注ぐ。

リンパ管は骨膜近傍の深部で叢を形成し、その中に拡張した嚢状部分が存在する。鼓膜の上縁と鼓室蓋の粘膜には細網性結合組織があり、リンパ球を含有している。この細網性結合組織は一部でリンパ小節様の構造を形成することがある。