(RK429(中指の軸を通る手の断面) 、RK431(右手背側の靱帯) )
この関節は5つの中手骨と各指の基節骨で構成される。関節面は中手骨の小頭と基節骨の底のくぼみである。
中手骨の関節小頭はほぼ球形だが、橈尺両側面が切り落とされている。曲率半径は第2~第5中手骨で約7~9mmだが、関節面の掌側部では曲率がさらに弱くなる。関節面は背掌方向に中心角約180°の弧を描く。軟骨の厚さは骨ごとに異なり、第2中手骨で0.5~0.8mm、第3中手骨で0.7~1.4mm、第4と第5中手骨で0.5~0.9mmである。軟骨が最も厚いのは、関節面の掌側3分の1と中央3分の1の境界部分である。基節骨の関節窩は長軸を横にした卵円形で、小頭より小さく浅い。曲率半径はFickによれば約26mmある。この面の湾曲に対する中心角は20°で、軟骨の厚さは第2指で0.5~0.8mm、第3指で0.7~0.9mm、第4指で0.5~0.7mm、第5指で0.5~0.9mmである。
関節包は緩やかで、背側では軟骨縁のすぐ際に付くが、掌側では軟骨縁から少し離れたところに付着する。関節腔は広く、関節窩の周囲には1つの脂肪ヒダがある。
特別な構造として最も重要なのは、非常によく発達した側副靱帯(Ligamenta collateralia、Seitenbänder)である。
関節の大きさとの関係からみれば、これは人体中最も強大な側副靱帯といえる。この靱帯は中手骨小頭の側面でやや背側にあるくぼみと隆起から起こり、斜めに遠位掌側方へ向かい、基節骨の関節窩縁の側面にある隆起に付く。橈側の側副靱帯は多くの場合、尺側のものより強い。側副靱帯の起始のさらに少し掌側から起こって弓状に走り、関節包の掌側面に扇状に散開する線維束があり、これを掌側副靱帯(Ligg. accessoria volaria)という。さらに関節包の掌側面は、横走線維束からなる強い掌側線維軟骨板(Lamina fibrocartilaginea volaris、Fick)によって補強されている。これは基節骨の関節窩の掌側縁のみから起こっている。
この掌側線維軟骨板は幅1cm、長さ1.5cmであり、多くの学者によって一種の関節唇と考えられている。その掌側面は屈筋腱の基盤をなし、近位端は側方で横小頭靱帯につながっている。
横中手骨小頭靱帯(Ligg. capitulorum ossium metacarpi transversa)は特別な位置を占める。
この靱帯は幅約1cmで、第2~第5中手骨の各小頭の間の掌側面に張っており、その背側にある中手指節関節の諸靱帯ならびに骨間筋の線維と結合している。また、この靱帯の掌側には虫様筋と指の掌側の血管・神経が走っている。この靱帯は第2~第5中手骨の散開運動を制限する。
種子骨:第1中手指節関節の関節包内には通常2つの種子骨があり、そのうち橈側のもの(7~8mm)が尺側のもの(4~5mm)より大きいのが一般的である。また、全例の4分の3において、小指の中手指節関節の尺側に1つの種子骨がある。その他の関節にも種子骨が出現することがある。
Pfitznerによると、5つの関節全体で最多7個、最少1個の種子骨が存在する。
中手指節関節の血管と神経は、近接する背側と掌側の血管および神経から供給される。
中手指節関節の力学:これらの関節は制限された球関節とみなせる。ここで生じる運動は、指が中手骨の延長線上にある中央位を基準位置とすると、次のようになる:背屈、掌屈、指の伸展位および軽度掌屈位での橈側および尺側への外転。ただし、指を強く掌屈すると側副靱帯が強く緊張するため、最後の運動は不可能となる。
母指の中手指節関節は、他の指に比べて運動性が小さいことが多い。