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目次(VI. 感覚器)

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基本構造と分布

主要な粘膜ヒダ

組織学的特徴

鼓室の粘膜は繊細で赤みを帯び、血管が豊富で、耳管粘膜の延長である。この粘膜は鼓室のすべての壁と、鼓室内部にあるすべての器官を被覆している。具体的には3つの鼓室小骨とその靱帯および関節、アブミ骨筋と鼓膜張筋の腱、鼓索神経などである。これらはすべて鼓室の壁が内部へ陥入してできたものとみなすべきで、その表面はいずれも鼓室粘膜で被われている。

この粘膜で被覆されていないのは、アブミ骨底の前庭面と、鼓膜の固有層内に組み込まれているツチ骨柄の部分のみである。粘膜は諸器官を被覆する際、ある部位では器官を密接に包み込み、他の部位では衣服の襞のように隆起を形成している。これらの襞のうち、特に大きく恒常的なものが2、3あり、付着する骨の名称に応じてツチ骨ヒダ・キヌタ骨ヒダ・アブミ骨ヒダと呼ばれる。

ツチ骨ヒダは鼓室の外側壁上部で、鼓膜近傍にある襞群で、鼓膜の上縁はこれらの襞によって覆われている。ツチ骨の長突起の一部と鼓索神経はこの襞内に存在する。ツチ骨より前方の襞が前ツチ骨ヒダPlica mallearis anterior、後方の襞が後ツチ骨ヒダPlica mallearis posteriorである(図676(左側鼓膜の内面、ツチ骨およびキヌタ骨) )。また鼓索神経を包む襞は鼓索神経ヒダPlica chordae tympaniと呼ばれる。キヌタ骨ヒダPlica incudisは鼓室後壁から斜めに長脚に沿って下降し、豆状突起上で終わっている。

アブミ骨ヒダPlica stapedisはアブミ骨とその閉鎖膜を包み、さらにアブミ骨筋の腱と小橋との間にも伸展している。

鼓室の粘膜は乳突洞口を通じて乳様突起内の含気腔に連続し、そこですべての骨板を被覆するだけでなく、粘膜のみからなる微細な隔壁や壁を形成し、骨壁間に特徴的な索状構造を形成している。

鼓室粘膜の上皮は線毛円柱上皮で、補充細胞を含む(図678)。ただし、鼓膜内面は単層扁平上皮で被覆されている(図677)。また前述の多くの襞や鼓室小骨表面の上皮は2~3層の扁平上皮で、線毛を欠く。粘膜の結合組織性成分である粘膜下組織は骨膜と密に結合しており、両者の境界は不明瞭である。

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図676(左側鼓膜の内面、ツチ骨およびキヌタ骨)

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図677(成人の鼓膜の下縁とその付近—放線方向の切断)、678(成人の鼓室の粘膜—横断)