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片山正輝

目次(I.骨格系)

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頭蓋腔の基本構造

主要な頭蓋窩

重要な構造物

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RK263(頭蓋の内側面)

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RK272(頭蓋の正中矢状断面)

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RK276(頭蓋底内面)

頭蓋函の内腔は、頭蓋の円蓋を成す皿状の骨と頭蓋底の諸骨によって囲まれている。円蓋を形成する骨の厚さは一様だが、頭蓋底の骨の厚さは非常に不均等である。

頭蓋腔の壁が最も薄い部分は、篩板、眼窩上壁の中央部、蝶形骨体の上壁、側頭骨の下顎窩、鼓室蓋、側頭鱗の中央部、顆窩、および小脳後頭窩の領域である。頭蓋底骨折は骨の薄さや頭蓋底の諸孔の影響を受けるが、それだけで決まるわけではない。むしろ、打撃の方向とその侵襲点が最も重要な要因となる。

頭蓋腔の上壁と側壁は連続した円蓋を形成しているが、頭蓋底の領域、すなわち頭蓋底の内面(Facies interna baseos cranii)は、テラス状の段差や多くの特殊な形状を示している。頭蓋底が2段階で落ち込んでいるため、各側に3つの広いくぼみが生じ、その形状は脳の底面とほぼ一致している。これら左右のくぼみの間には、中央の不対性の区域があり、篩板(Lamina cribriformis)、鶏冠(Crista galli)、蝶形骨の上面、下垂体窩(Fossa hypophyseos)、鞍背(Dorsum sellae)、斜台(Clivus)、大後頭孔(Foramen occipitale magnum)から構成されている。

前頭蓋窩(Fossa cranii frontalis)は、発達した脳回圧痕(Impressiones gyrorum)や脳隆起(Juga cerebralia)によって特徴づけられる。前方で丸みを帯びた床を形成し、全ての頭蓋窩の中で最も高い位置にある。鎌形に切り取られた蝶形骨小翼の後稜によって中頭蓋窩と区切られている。前頭蓋窩は大脳の前頭葉を収容する。蝶骨前頭縫合(Sutura sphenofrontalis)が前頭骨の眼窩部と蝶形骨の小翼とを結合している。

中頭蓋窩(Fossa cranii media)は前頭蓋窩よりも深く、中央の鞍部(Pars sellaris)と両側の側頭部(Partes temporales)から構成されている。前方は蝶形骨小翼の後縁、内側は蝶形骨体の側壁、後方は錐体稜(Crista pyramidis)、側方は側頭鱗によって境界されている。中頭蓋窩の底は蝶形骨大翼の大脳面(Facies cerebralis alae magnae)と錐体の大脳面(Facies cerebralis pyramidis)によって形成されている。脳回圧痕と脳隆起のほか、以下の構造に注意すべきである。前方では上眼窩裂(Fissura orbitalis cerebralis)が眼窩との連絡をなしている。また正円孔(Canalis rotundus)が翼口蓋窩に通じ、卵円孔(Foramen ovale)が側頭下窩に通じる。棘孔(Foramen spinosum)は中硬膜動脈と下顎神経の硬膜枝を頭蓋腔に導いている。中硬膜動脈の幹のための溝は深さが変化するが、側頭鱗の内面に認められる。蝶形骨の側壁には頚動脈溝(Sulcus caroticus)と蝶形骨小唇(Lingula sphenoidalis)があり、側頭骨の錐体尖の前には破裂孔(Foramen lacerum)がある。また錐体尖の上に半月神経節のための三叉神経圧痕(Impressio trigemini)が認められる。錐体の大脳面には弓状隆起(Eminentia arcuata)、顔面神経管裂孔(Hiatus canalis facialis)、小浅錐体神経管の内口(Apertura interna canaliculi nervi petrosi superficialis minoris)、大浅錐体神経溝(Sulcus nervi petrosi superficialis majoris)、小浅錐体神経溝(Sulcus nervi petrosi superficialis minoris)が認められるが、それらの位置については既述の通りである。頚動脈管の上壁には多くの場合、大小不定の裂隙が形成されているが、ほとんど認められないこともある。錐体稜の上には錐体稜溝(Sulcus cristae pyramidis)がある。頭蓋骨の縫合としては蝶頭頂縫合(Sutura sphenoparietalis)、蝶鱗縫合(Sutura sphenosquamosa)、蝶錐体裂(Fissura sphenopetrosa)が認められ、さらに錐体鱗裂(Fissura petrosquamosa)が時に存在する。

中頭蓋窩は大脳の側頭葉を収容しており、側頭鱗の内面だけでなく外面にも(G. Schwalbe)その大脳回に一致する凹凸が生じている。下側頭回は鼓室蓋(Tegmen tympani)の上にあり、上および中側頭回は側頭鱗に接している。