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第四脳室は中心管が拡張した部分で、脳脊髄液で満たされている。この構造は以下の要素から成る:底と蓋、側方を境する2つの縁、外側に延びる2つの膨出部、中脳水道につながる上方(吻側)と延髄の中心管につながる下方(尾側)の開口部、さらに軟膜腔に通じる正中部の1つの孔と2つの側方の孔。第四脳室の長さは約25mmである。
第四脳室蓋(Tegmen ventriculi quarti)は、上方では前髄帆(Velum medullare anterius)と両側の結合腕(Brachia conjunctiva)から構成され、下方は小脳の虫部小節(Nodulus)、左右の後髄帆(Velum medullare posterius)、および第四脳室脈絡組織(Tela chorioidea ventriculi quarti)からなる。小脳に向かって尖っている第四脳室蓋の突出部は天幕(Zelt)と呼ばれ、その稜線を室頂(Fastigium, Giebelkante)という(図410(脳の正中断面の一部を拡大したもの) )。
第四脳室蓋の下部には、わずかに肥厚した側縁がある。これは閂(かんぬき)から第四脳室外側陥凹の腹方端まで延び、第四脳室の蓋板を除去した際、多くの場合、延髄に付着したまま残る。
この構造は菱脳ヒモ(Taenia rhombencephali)と呼ばれる(図421(菱形窩の表面像)、図422(脳幹、四丘体付近、菱形窩) )。菱脳ヒモの上部は小脳の片葉(Flocculus)からその虫部小節まで延びている(図427(小脳:前下方からの視点) )。詳細は後述の小脳の項(II. 小脳 Cerebellum, Kleinhirn)および髄帆の項(f) 前と後の髄帆 Vorderes und hinteres Marksegel )を参照されたい。
第四脳室底は、わずかに凹んでおり、その形状から菱形窩(Fossa rhomboidea, Rautengrube)と呼ばれる。その表面は灰白色を呈し、多くの特徴的構造を示す。下方に向かって尖った端は、ペン先に似ていることから筆尖(Calamus scriptorius)と呼ばれる(図422(脳幹、四丘体付近、菱形窩))。
正中にある縦の溝(菱形窩の正中溝 Sulcus medianus fossae rhomboidis)は菱形窩を左右対称の両半に分けている。髄条(Striae medullares)(図421(菱形窩の表面像))は、1本の比較的太い、あるいは複数の細い白質の横走する線条で、第四脳室外側陥凹付近から横走して正中線に達する。この髄条によって菱形窩は上部、中部、下部の3領域に区分される。
菱形窩の下部は延髄に属する。髄条が通過する中部は後脳に属し、側方へは第四脳室外側陥凹(Recessus lateralis ventriculi quarti)(図422(脳幹、四丘体付近、菱形窩))に続く。この陥凹は索状体に沿って側方に回り、小脳の片葉柄(Pedunculus flocculi)で終わる(図427(小脳:前下方からの視点) )。菱形窩の上部は側方が結合腕によって境される。
正中溝の両側に低く縦長の隆起があり、これを内側隆起(Eminentia medialis)という(図421(菱形窩の表面像) 図422(脳幹、四丘体付近、菱形窩))。この隆起は菱形窩の全長にわたり、上方の領域では幅が広くなり、より明瞭となる。その側方の境界は浅い溝で、菱形窩分界溝(Sulcus limitans fossae rhomboidis)と呼ばれる。菱形窩の下部には、濃い灰白色と軽度の陥凹を呈する三角形の領域があり、灰白翼(Ala cinerea)と呼ばれる。その下には灰白翼核(Nucleus terminalis alae cinereae、舌咽神経と迷走神経の終止核)がある。灰白翼の上部の尖端が特に深くなっている部分を下窩(Fovea caudalis)という。灰白翼の上方に向かった尖端から正中溝に垂直線を引くと、三角形の領域が区画される。これを舌下神経三角(Trigonum n. hypoglossi)といい、その下に舌下神経の核がある。灰白翼と菱脳ヒモの間の狭い領域は最後野(Area postrema)と呼ばれる。第四脳室外側陥凹への入口付近で、第四脳室底が隆起して低い丘を形成し、これを前庭神経野(Area vestibularis)(図421(菱形窩の表面像)、図422(脳幹、四丘体付近、菱形窩))という。
髄条の上方で、内側隆起は幅が広くなり、顕著な円形の隆起を形成する。これを顔面神経丘(Colliculus facialis)という。これは顔面神経が脳内で形成する膝によるものである。この隆起の外側縁では、菱形窩の表面が陥凹して上窩(Fovea rostralis)という小さな窪みを形成する。これより前方では、各側の結合腕に接して青みを帯びた領域があり、中脳水道への入口にまで達している。これを青斑(Locus caeruleus)と呼ぶ。