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陰茎海綿体は陰茎体の大部分を占め、陰茎体の形状と硬度を主に決定する。その後端は2つに分かれ、[陰茎海綿体]脚(Crura corporis cavernosi penis)と呼ばれる。脚は先細りになり、恥骨枝の結合部と坐骨枝の恥骨部に付着している(図267(男性の膀胱の内面(強度収縮時)と尿道)、図326(尿道の前立腺部上部を通る断面)、327(精丘を通る断面)、328(尿道の前立腺部下部を通る断面)、329(尿道膨大部を通る断面)、330(尿道の海綿体部中間部を通る断面)、331(尿道舟状窩を通る断面)、図333(男性の会陰と骨盤出口の筋II)、図335(男性の会陰と骨盤出口の筋 III))。
後部は前方部に比べて線維性被膜が脆弱である。そのため、脚は充血時により容易に拡張し、軽度の膨隆を形成する。海綿体の前端は尖り、亀頭の凹面に囲まれ、強靭な結合組織で亀頭に固定されている。
陰茎海綿体の尿道面には正中線に沿って顕著な縦溝があり、尿道海綿体部の大部分を収容し固着している。陰茎背面にもより浅い正中溝がある。この背側溝の中央には筋膜下陰茎背静脈が、その両側に陰茎背動脈が、さらに外側には陰茎背神経が位置する(図326(尿道の前立腺部上部を通る断面)、327(精丘を通る断面)、328(尿道の前立腺部下部を通る断面)、329(尿道膨大部を通る断面)、330(尿道の海綿体部中間部を通る断面)、331(尿道舟状窩を通る断面))。
陰茎海綿体の正中面には不完全な隔壁、[陰茎海綿体]櫛状中隔(Septum pectiniforme corporis cavernosi penis)がある。これは後方では厚く連続的だが、前方に向かって徐々に薄くなり、左右2つの空間を不完全に分離する。ここには多数の垂直方向の裂隙があり、両側の海綿組織が自由に連絡する場となっている(図267(男性の膀胱の内面(強度収縮時)と尿道)、図334(陰茎海綿体の櫛状中隔:左側からの視点))。
外側を覆う線維性被膜、陰茎海綿体白膜(Tunica albuginea corporis cavernosi penis)は緻密な結合組織で構成され、白色を呈し、厚さは1〜2mmである。この厚さは陰茎の緊張度によって変化し、勃起時には1/4以下に薄くなる。この白膜は浅層の縦走束と深層の輪走束からなり、いずれも線維性結合組織で、多量の弾性線維を含む。
陰茎提靱帯(Lig. suspensorium penis)と陰茎係蹄靱帯(Lig. fundiforme penis)については図326(尿道の前立腺部上部を通る断面)、327(精丘を通る断面)、328(尿道の前立腺部下部を通る断面)、329(尿道膨大部を通る断面)、330(尿道の海綿体部中間部を通る断面)、331(尿道舟状窩を通る断面)とRK492(腹筋) を参照されたい。
海綿体を構成する海綿組織(Schwammgewebe)は結合組織の梁と膜からなり、平滑筋線維束を含む。これらが様々な密度の骨組み、すなわち**[海綿体]小柱**(Trabeculae corporis cavernosi)を形成する。その間隙は相互に連絡し、単層の内皮細胞で覆われている。この空間を海綿体洞(Cavernae corporis cavernosi、kavernöses Labyrinth)と呼び、著しく拡張・収縮が可能で、内部に血液を蓄える。
陰茎が縮んでいるとき、動脈の枝は係蹄状にうねっていることが多い。これを螺行動脈(Aa. helicinae, Rankenarterien)という。
陰茎深動脈と陰茎背動脈から血液が流入し、流出は粗な表層の静脈網と中心の海綿組織から行われる。これらの血液は陰茎深静脈と筋膜下陰茎背静脈に集まる。
尿道海綿体は陰茎海綿体とは若干異なる。深層は尿道の粘膜下組織の静脈叢、浅層は陰茎海綿体の海綿組織に類似するが、より細い小柱と小さな腔所を持つ。ここでは動脈と海綿体洞の直接的つながりはない。陰茎亀頭は著しくうねった静脈群で構成され、陰茎背動脈の前方枝から血液供給を受ける。
海綿体の機能的意義は、含有血液量の変化による急激な容積変化にある。この役割を担う海綿体洞は、平滑筋を壁に持つ巨大毛細管網と見なせる。
血液の強い流入は動脈と洞との直接・間接の結合によって起こり、一方で血液流出を制御する装置が存在する。
[図325]陰茎の海綿体:筋を取り除き、亀頭を露出させた状態。(4/5)
[図326]尿道の前立腺部の上部を通る断面×1
[図327]精丘を通る断面×1
[図328]尿道の前立腺部の下部を通る断面×1
[図329]尿道膨大部を通る断面×1
[図330]尿道の海綿体部の中間部を通る断面×1
[図331]尿道舟状窩を通る断面×1
[図332]男の会陰,骨盤出口の筋I(9/10)