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目次(IV. 内臓学)

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α) 胞状管状単一腺(alveolotubuläre Einzeldrüsen):例えば幽門腺。

β) 胞状管状分枝腺(alveolotubuläre verästelte Drüsen):例えば尿道傍腺。

γ) 胞状管状複合腺(alveolotubuläre zusammengesetzte Drüsen):例えば肺、前立腺、粘液性唾液腺、十二指腸腺。

管状単一腺では、その個々の部分が特別な名称を持つ。すなわち、腺底(Fundus, Drüsengrund)、腺体(Corpus, Drüsenkörper)、腺頚(Collum, Drüsenhals)、腺口(Orificium, Drüsenmündung)が区別される。分枝腺では腺頚に相当する部分が導管の役割を果たす。複合腺は1本の主要導管(Hauptausführungsgang)を持ち、これはしばしば特別な名称で呼ばれる(耳下腺管、総肝管、気管、尿管)。

主要導管は分岐して1次、2次などの番号を付けることのできる多数の導管(Ausführungsgänge I., II. usw. Ranges)となって腺内に広がる。これを導管系(Gangsystem)という。1つの腺内にある導管の数は腺の大小や種類によって異なる。また導管自体が分泌作用を持つことはまれで、多くの場合はもっぱら腺の生産物を外へ導き出す役目を果たし、そのための特別な構造を備えている。一方、実際に分泌が行われる部分は終末部(腺体)(Endkammern)と呼ばれる。多くの腺では導管の先端が終末部に続く箇所が特別な構造をしており、介在部(峡部)(Schaltstück)と名付けられて区別される(図007(腺の終末部と導管の微細構造の模式図))。

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図007(腺の終末部と導管の微細構造の模式図)

導管の上皮および腺の分泌が行われている部分の上皮は単層のこともあれば、重層のこともある。腺の上皮組織のすぐ外側に接しているものは、多くの場所ではガラスのように透明で抵抗の強い薄い膜であり、これを基底膜(Grundhaut)という。無数の極めて細い結合組織原線維から構成されている(Flint 1903)。しかし、完成した基底膜では、これが結合組織の細胞や線維で構成されていることが常に識別できるとは限らない。この膜のさらに外側で腺を支えているものは、他の型の結合組織、例えば線維性結合組織である。ここにしばしば筋細胞も存在する。さらに血管、リンパ管、神経が腺に分布している。

複合腺では、その大小様々な部分が腺内の結合組織によって取り囲まれて1次の小葉(Lobuli, Läppchen)を形成し、またその集まりが2次あるいはそれ以上の高次のもの(、Lobi)となっている。隣り合う小葉や葉が結合組織によって連結され、同時に隔てられている。さらに、腺全体が線維膜(Tunica fibrosa)あるいは白膜(Tunica albuginea)という丈夫な線維性の膜によって包まれていることがしばしばある。

つまり腺全体は、分泌物を作ってそれを外へ導く上皮性の部分、すなわち実質(Parenchym)と、支持のための結合組織性の骨組みである支質(Stroma)とから構成されている。

腺内で分泌が行われている部分は、多くの場合1層の細胞からなる。この細胞の底面は基底膜に接しており、それとは反対の、いわゆる自由面(freie Fläche)は多くの場合狭い腺腔(Drüsenlichtung, Drüsenlumen)を囲んでそれと接している。またその他のいくつかの面をもって隣接する細胞と接している。隣り合う細胞の間は細胞間物質および細胞間橋によって結合されており、腺腔に面するところには細胞の間に閉鎖堤網がある(図007(腺の終末部と導管の微細構造の模式図))。脈管系は基底膜の外面に接して密な毛細血管網を形成しており、この脈管系から腺細胞は水溶性の塩類やタンパク質を細胞の基底面で取り込む。これらの物質がそのまま外に出されることもあれば、腺細胞が働いてこれらの物質を材料にして特殊な分泌物ないし排出物を作る。その生産物が多くの場合、腺腔に向かった面で細胞外に出されるか(粘液性の諸腺、腎臓、腸腺、子宮腺)、あるいは特別な細い管(分泌細管、Sekretkanälchen)を通じて出される。こうした管には2種類が区別され、その1つは隣り合う細胞の側面の間にあるもので細胞間分泌細管(zwischenzellige Sekretkanälchen)といい、例えば耳下腺や涙腺にある。他は個々の細胞の内部に見られるもので細胞内分泌細管(innenzellzge Sekretkanälchen)といい、それも簡単な管の形をしている場合(図007(腺の終末部と導管の微細構造の模式図))と網の形をしているときがある(胃底腺の傍細胞)(図105(ヒト胃粘膜の横断面図)、106(ヒト胃底腺の3種細胞)、107(ヒト胃底腺の一部)、108(ネコ胃底腺の一部)図110(ウサギの胃底腺の腺底における傍細胞の分泌細管:豊富な食餌を与えて4時間後)、111(ウサギの胃底腺の腺底における傍細胞の分泌細管:24時間絶食させた後))。

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図007(腺の終末部と導管の微細構造の模式図)

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図105(ヒト胃粘膜の横断面図)、106(ヒト胃底腺の3種細胞)、107(ヒト胃底腺の一部)、108(ネコ胃底腺の一部)

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図110(ウサギの胃底腺の腺底における傍細胞の分泌細管:豊富な食餌を与えて4時間後)、111(ウサギの胃底腺の腺底における傍細胞の分泌細管:24時間絶食させた後)

ある種類の腺では細胞が分泌を終えた後に死滅する。このような腺を全分泌腺(holokrine Drüsen)といい、これに対する名称が部分分泌腺(merokrine Drüsen)である。後者は細胞がその内部に生じた分泌物を外に出した後、再びその製造を開始するもので、最も一般的に見られる通常の腺である。

腺細胞が活動しているときには、その細胞内に特別な構造として分泌顆粒(Drüsengranula)が認められる。これは大小様々な粒子であり、最初に現れるときはかろうじて顕微鏡で見える程度のものだが、次第に大きくなり、やがて分泌細管のある場合はその中に入り、腺腔に達する。

腺腔にはそのとき腺細胞から出てきた液体があり、分泌顆粒はその中に溶解する(図063(漿液性舌腺の終末部1個の横断面)、064(耳下腺の終末部1個の断面)、065(耳下腺の終末部1個の接線方向の断面)、066(顎下腺の粘液性腺管とジアヌッチィ半月))。

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図063(漿液性舌腺の終末部1個の横断面)、064(耳下腺の終末部1個の断面)、065(耳下腺の終末部1個の接線方向の断面)、066(顎下腺の粘液性腺管とジアヌッチィ半月)

ウトレヒト(オランダ)のG. C. Hirsch(Handb. Phys., 18. Bd., 1932)は、マウスの生きている膵臓細胞を20時間にわたり生理的条件下で観察し、分泌顆粒の形成について研究した。その結果、この粒子が最初に見え始めてから成熟するまでに10〜13時間かかることを明らかにした。

粒子は初め腺細胞の基底部にあるミトコンドリアの表面に付着し、0.1µmの大きさの小粒として現れる。そこに10〜17分間留まる間にやや大きくなる。次いでその最初の場所を離れ、およそ1〜1.5時間かけて核の周囲を迂回し(速度は1µmを進むのに7〜13分)、内網装置のところに移動する。この移動の間におよそ6倍の大きさになり、明るくなり、その他の物理化学的性質も変化する。続いて内網装置のところに滞在する間に分泌顆粒は小さくなり密になる。その後、細胞の尖端部(腺腔に面する部分)に移動し、そこで蓄えられる(図005(分泌顆粒の形成))。

分泌顆粒に伴う液体(Flüssigkeit)はおそらく細胞質から出てくるのであろう。この液に含まれる無機成分の量は、恐らく内網装置の働きによって影響され、調節されるものと考えられる。著者(Kopsch)自身の度重なる観察がそのことを示唆している。

Saguchi(佐口栄、元金沢大学教授)(1922)によると、この液体は内網装置から出るという。

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[図5]分泌顆粒の形成

G. C. Hirschの研究による:1~5の連続した段階。