先述の板間静脈に続いて、頭蓋腔の導出静脈がある。これらは骨を貫き、頭蓋内外の静脈を相互に連結している。導出静脈には太いものから細いものまで様々あるが、興味深いことに、その主な役割は内部の静脈(特に静脈洞)へ血液を導入するというよりも、むしろ外部へ排出することにある。そのため、内腔が過度に充満した場合には一種の安全弁として機能する。なお、板間静脈の一部はこの導出静脈に開口している。

α. 破裂孔導出静脈 Emissarium foraminis laceri:海綿静脈洞と翼突筋静脈叢を連結し、破裂孔を通過する。

β. 卵円孔静脈網 Rete foraminis ovalis:海綿静脈洞と翼突筋静脈叢を結ぶ静脈網で、卵円孔を通る。

γ. 内頚動脈静脈叢 Plexus venosus caroticus internus:内頚動脈を取り巻き、海綿静脈洞と翼突筋静脈叢を連結する。

δ. 頭頂導出静脈 Emissarium parietale:浅側頭静脈と上矢状静脈洞を連結し、頭頂孔を通過する。

ε. 乳突導出静脈 Emissarium mastoideum:S状静脈洞と後頭静脈を連結し、乳突孔を通る。

ζ. 舌下神経管静脈網 Rete canalis n. hypoglossi:前椎骨静脈叢と内頚静脈上球を連結し、舌下神経管内で舌下神経に沿って走行する。

η. 顆導出静脈 Emissarium condylicum:S状静脈洞と椎骨静脈叢を連結し、顆孔(Foramen condylicum)を通る。

θ. 後頭導出静脈 Emissarium occipitale:静脈洞交会と後頭静脈を連結する。