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尿道の海綿体部は、尿道の壁に発達した特殊な海綿体、すなわち尿道海綿体(Corpus cavernosum urethrae)を持つ部分である。この部分の長さは12〜15cmである。
尿道の後部は拡張しており、特に尿道膨大部(Ampulla urethrae)と呼ばれる。ここでは内面の全周が約1.75cmである。その前方に続く中間部(Portio intermedia)は、亀頭まで概ね同じ幅を保ち、全周が1.6cmである(図322(男性尿道海綿体部の中央横断面))。横断面では内腔が横方向の裂け目状だが、亀頭では垂直方向の裂け目状となる(図266(男性骨盤の正中断面)、図326(尿道の前立腺部上部を通る断面)、327(精丘を通る断面)、328(尿道の前立腺部下部を通る断面)、329(尿道膨大部を通る断面)、330(尿道の海綿体部中間部を通る断面)、331(尿道舟状窩を通る断面))。亀頭で尿道は再び顕著に広がり、舟状窩(Fossa navicularis urethrae)という舟形の窪みを形成する。これは外尿道口のすぐ後方で、長さ2cmの拡張部である(図326(尿道の前立腺部上部を通る断面)、327(精丘を通る断面)、328(尿道の前立腺部下部を通る断面)、329(尿道膨大部を通る断面)、330(尿道の海綿体部中間部を通る断面)、331(尿道舟状窩を通る断面))。外尿道口は再び狭くなり、拡張しにくい。縦方向に伸びる2枚の唇状構造で境界されている。
粘膜は弛緩時に多数の大小の縦走ひだを持つが、伸展時にはこれらのひだは消失する。また、尿道凹窩(Lacunae urethrales)と呼ばれる窪みが、特に尿道上壁の舟状窩後方に存在する。その開口部は弁状の膜で覆われ、前方を向いている。これらの構造ひだ(Strukturfalten)は多様だが、比較的大きなものが舟状窩後方の上壁から弁状に垂れ下がっており、舟状窩ヒダ(Plica fossae navicularis)と呼ばれる。
粘膜上皮は重層円柱上皮である(図323(男性尿道の上皮と尿道傍腺))。舟状窩からは重層扁平上皮に変わる。粘膜の結合組織には豊富な弾性線維があり、舟状窩には発達した乳頭が多数存在する。粘膜全体に分枝した管状腺、すなわち尿道傍腺(Glandulae paraurethrales)が散在し、その終末部は海綿組織深くまで伸びている。尿道の隔膜部では内側の縦走筋と外側の輪走筋層がよく発達しているが、海綿体部では両層とも徐々に消失する。
輪走筋は尿道膨大部でもなお発達しているが、最初に消失する。海綿体部の前部では斜走および縦走する束からなる網のみが観察される。
前立腺部と隔膜部にも少量の海綿組織が形成されているが、海綿体部ではこの組織が著しく発達し、大きな領域を占める(図322(男性尿道海綿体部の中央横断面))。そのため、尿道の海綿体部の海綿組織からなる部分を尿道海綿体(Corpus cavernosum urethrae)と呼ぶ。
この海綿体は前後端が肥大している。後方の肥大部は棍棒状で、前述の尿道[海綿体]球(Bulbus corporis cavernosi urethrae)から始まる(図325(陰茎の海綿体))。前方の肥大部が陰茎亀頭である。中央部は亀頭に向かって徐々に細くなる。
尿道球は上面で尿生殖隔膜に接着し、自由面は球海綿体筋に包まれる(図262(男性の骨盤内臓器)、図266(男性骨盤の正中断面)、図324(陰茎の海綿体とその筋:皮膚を除去した状態)、図333(男性の会陰と骨盤出口の筋II))。正中部には線維性の隔壁、尿道球中隔(Septum bulbi urethrae)があり、小児の陰茎でよく発達しているが前方へはあまり続かない。尿道は尿生殖隔膜を通過後、球の後部に上方から斜めに進入する(図266(男性骨盤の正中断面))。
前方の肥大部は釣鐘状で、外形は陰茎亀頭に一致する。正中線上に亀頭中隔(Septum glandis)と呼ばれる隔壁がある。
この肥大部の後面は深く窪み、まず尿道海綿体の中央部が続き、次いで陰茎海綿体の細く丸い前端部を受け入れている(図267(男性の膀胱の内面(強度収縮時)と尿道)、図325(陰茎の海綿体)、図326(尿道の前立腺部上部を通る断面)、327(精丘を通る断面)、328(尿道の前立腺部下部を通る断面)、329(尿道膨大部を通る断面)、330(尿道の海綿体部中間部を通る断面)、331(尿道舟状窩を通る断面))。