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目次(VI. 感覚器)

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  1. および2. 上眼瞼挙筋 M. levator palpebrae superiorisと瞼板筋 Mm. tarsei(図652(ヒトの眼瞼と眼球前方部の正中矢状断面)図660(両側の眼窩内の諸筋を上方からみる)図661(左眼窩内の諸筋を左側面から見る)図662(左眼窩の眼瞼板、上眼瞼挙筋腱、上下斜筋を前方から剖出した図)

上眼瞼挙筋は短い腱をもって視神経管の上部と視神経の硬膜鞘から起始する。上直筋の起始腱と合しているが、総腱輪の外に位置する。その細長く薄い筋腹は眼窩の上壁の下方、前頭神経の下、上直筋の上を前方へ走り、眼窩口縁付近で黄白色の放散状の腱に移行する。この腱板は2層に分かれ、上(前)の層を浅板Lamina superficialis、下(後)の層を深板Lamina profundaと呼ぶ(図652(ヒトの眼瞼と眼球前方部の正中矢状断面)図661(左眼窩内の諸筋を左側面から見る) )。

浅板は眼輪筋と上眼瞼板の間を走り、睫毛の位置まで下降する。その過程で多数の線維束を出し、これらは眼輪筋の筋束間を貫いて上眼瞼の皮膚に停止する。H. Virchowによれば、眼瞼板の前面への付着は存在しない。

腱板の下(後)層、すなわち深板は、かなり多量の平滑筋線維―瞼板筋M. tarseusを含み、上眼瞼板の上縁とその前面に付着する。挙筋の腱板から内側と外側へ尖頭状に伸びた線維束は、眼窩の内外両側壁に達する(図662(左眼窩の眼瞼板、上眼瞼挙筋腱、上下斜筋を前方から剖出した図) )。

上眼瞼の瞼板筋から薄い1筋束が分かれて滑車付近に至ることがしばしばあり、これがBudgeの滑車張筋M. tensor trochleaeである。下直筋の鞘から結合組織の線条が下眼瞼と眼輪筋の後面に至る。上眼瞼では、これに相当するものが独立した挙筋の腱となっている。上眼瞼挙筋は上直筋から分離した筋束としての意味を持つ。一方、下直筋はこのような徹底した分裂を示さず、上直筋と上眼瞼挙筋を合わせたものに相当する。

  1. 眼輪筋については顔面筋(第I巻401頁)と眼瞼(621頁)の項ですでに述べた。

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[図662] 左眼窩の眼瞼板、上眼瞼挙筋腱、上下斜筋を前方から剖出した図(9/10)