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目次(VI. 感覚器)

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解剖学的構造

粘膜と組織

血管・神経支配

機能的特徴

耳管骨部は鼓室に直接通じる部分で、断面は角の丸い三角形を呈し、その横径は約2mmである。内側は頚動脈管に、外側は錐体鱗裂Fissura petrosquamalisに、上方は筋管総管中隔Septum canalis musculotubalisに、下方は鼓室稜Crista tympanicaに接している。耳管骨部は錐体尖付近で不規則な粗縁となって終わり、この部位に耳管軟骨が固着している。

粘膜Tunica mucosaは咽頭粘膜の続きで、咽頭近くではその性状を保ち、厚さは0.5~0.6mmである。鼓室に近づくにつれて著しく薄くなり、鼓室の薄い粘膜へと移行する。粘膜は疎性結合組織によって軟骨膜と結合し、両者の間は可動性がある。一方、耳管骨部では粘膜下組織が乏しく、骨膜と癒合している。粘膜には不規則な縦走するひだがあり、骨部下壁では繊細だが、軟骨部では顕著に発達している。上皮は単層線毛上皮で、多数の杯細胞と補充細胞を含む。線毛の波動は咽頭口へ向かう。粘膜固有層は線維性結合組織からなり、咽頭近くでは細網構造が目立ち、多数の白血球を含む。この部位の粘膜には小さなリンパ小節が存在することがあり、耳管リンパ小節Lymphonoduli tubalesと呼ばれる。また軟骨部の粘膜には粘液腺Glandulae mucosaeが豊富に存在する。

咽頭口から鼓室に向かって、この上皮性腺は一定区間にわたり連続した層を形成している。鼓室に近づくにつれて腺は減少するものの、鼓室口でも散在性に認められる。特に大きな腺は咽頭口近くに存在し、その導管は咽頭粘膜内を通り、軟骨を貫通するほどの大きさである。

耳管の動脈は翼突管動脈A. canalis pterygoideiおよび上行咽頭動脈A. pharyngica ascendensに由来する。中硬膜動脈も関与することがあり、その場合はこの動脈の錐体枝R. pyramidisが錐体鱗裂を通って耳管上壁へ極めて細い枝を送る。リンパ管は骨部・軟骨部ともに豊富で、咽頭口で咽頭粘膜のリンパ管と連続している。

神経は鼓室神経叢Plexus tympanicusからの耳管枝R. tubae pharyngotympanicaeと咽頭神経叢Plexus pharyngicusからの枝からなる。有髄・無髄の両線維が存在し、多数の顕微鏡的神経節を有する。

骨部の内腔は血管の充満度による微細な変化以外には動きを示さない。軟骨部の大部分では、線毛を持つ両側壁が接近し、内腔の下部と中部は高さ約7mmの垂直な裂隙を形成している。裂隙の上部、すなわち軟骨のフック状部分で囲まれる領域では、粘膜表面が軟骨板の曲線に沿って円弧状となる。そのため内腔の上部は常に開存しており、これを安全管Sicherheitsröhreと呼ぶ。残りの裂隙部分は補助隙Hilfsspalteと呼ばれる。軟骨部の前方では軟骨のフック状部分が徐々に減弱し消失するため、粘膜表面が全体的に接近する。補助隙の壁は通常接しているが、口蓋帆張筋の収縮により離開しうる(図679(**ヒトの耳管とその周辺構造:**咽頭口付近の横断面))。