この関節は、骨間手根間靱帯で結合された近位列の手根骨(豆状骨を除く)と、同様に骨間靱帯で結合された遠位列の手根骨で構成される。
関節面は、舟状骨・月状骨・三角骨の遠位関節面と、大多角骨・小多角骨・有頭骨・有鈎骨の近位関節面である。
近位列の手根骨の関節面は横方向に波状を呈し、橈側1/3が凸、中央約2/3が深く陥凹し、尺側端が再び凸となる。背掌方向の弯曲は各骨で大きく異なり、軟骨の厚さも非常に不均一である(詳細はWernerを参照)(Werner, H.:Die Dicke der menschIichen GeIenkknorpel, Inaugural-Dissertation Berlin 1897.(原著註))。遠位列の関節面は近位列とは逆の弯曲を示し、大小多角骨は凹面で舟状骨の凸面に対応する。有頭骨と有鈎骨は近位方向に強く突出する関節頭を形成し、これが舟状骨・月状骨・三角骨による深い関節窩に嵌まる。この関節頭は掌側深く、月状骨および三角骨の下に入り込む。各骨の面の弯曲は非常に多様で、軟骨の厚さも不定である(詳細はFickおよびWernerを参照)。
関節包は関節軟骨の縁に沿って付着し、背側で弛緩、掌側で緊張している。
関節腔は陥凹に富み、しばしば(月状骨と舟状骨の間隙を通じて)橈骨手根関節に通じ、総手根中手関節とも連絡する。多数の滑膜襞が認められ、背側壁と掌側壁にそれぞれ1つの大きな横走ヒダがある。
特別な装置として、背側と掌側に補強靱帯があり、背側および掌側手根間靱帯Ligg. intercarpica dorsalia, volariaと呼ばれる。掌側の補強靱帯のうち、有頭骨から四方へ放散する線維束を総称して放線状掌側手根靱帯Lig. carpi volare radiatumという。
月状骨からは靱帯が生じない(H. Virchow, Fick)。掌側靱帯には、他に舟状骨から大多角骨に至るものがある。また掌側橈骨手根靱帯の有頭骨に達する線維束も、遠位手関節の補強に寄与する。背側の補強靱帯は尺側より橈側でより強力である。三角骨から有鈎骨に強い線維束が達するが、舟状骨の背側面からは近位方向にも遠位方向にも、顕著な線維束は出ていない。一方、舟状骨の背面の粗な隆起線から三角骨へと横走する靱帯があり、これを背側手根弓状靱帯Lig. arcuatum carpi dorsale, "Bogenband"(Fick)と呼ぶ。この靱帯は有頭骨と有鈎骨による遠位列の関節頭の上を横断し、この関節頭をその関節窩内に上から押さえつける。この靱帯から少数の線維束が遠位方向に分枝し、遠位列の様々な骨に至る。H. Virchowはこれらを手根間靱帯に含めていないが、Fickはそれに属すべきと考えている。
この関節の血管および神経は橈骨手根関節の場合と同じである。
手関節の力学:R. Fick(Handbuch, Bd. III, 1911)によれば、両手関節では骨の組み合わせが有頭骨の中央を回転中心とする一種の球関節を形成している。そのため、死体ではほぼすべての方向に動かすことができる。しかし生体では、能動的に(つまり意識的に)中手を前腕に対して縦軸を中心に回旋(回内および回外)することはできない。それでも手自体は背側・掌側・橈側・尺側のいずれの方向にも動かせるだけでなく、任意の斜め方向にも曲げることができる。これらすべての運動の際、両方の主な関節にずれが生じ、運動が大きい場合には両列の各骨間の小さい関節面にもずれが起こる。
手の側屈運動(Randbewegung)、すなわち橈屈と尺屈(Radial- und Ulnarabduktion)の過程は非常に複雑である。この場合、手根骨の両列の回転は1つの垂直軸(掌背方向の軸)を中心とする単純なものではなく、両列がそれぞれ別の、しかも3つの主方向に対して斜めの軸を中心に回転する。R. Fickが生体でX線により示したところによると、橈屈時には近位列の手根骨に側方へのずれだけでなく、掌側への屈曲と回内が同時に起こる。この掌屈と回内運動は、橈屈時に舟状骨が掌側へ、三角骨が背側へ移動し、三角骨が手背に凸出することで、生体でも確認できる。
近位列のこの動きは、橈屈時に大多角骨がそれに付着する筋に引かれて橈骨の遠位端に引き寄せられることを考慮すると理解しやすい。これにより大多角骨は、舟状骨(大多角骨は舟状骨の遠位面の背橈側で接している)の橈側部を排除しようとして尺側へ押し、さらに近位方向および掌側方向へ傾ける。こうして舟状骨は側屈、掌屈、回内を組み合わせた1つの回転をし、舟状骨と結合する月状骨と三角骨もこれらの運動に伴う。尺屈時はこれらと反対の運動が起こる。
手の掌屈と背屈における運動過程はより単純で、この場合、手根骨の両列が有頭骨の頭を通る横走軸の周りを、ほぼ同一方向に回転する(R. Fick)。