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(図266(男性骨盤の正中断面)、図267(男性の膀胱の内面(強度収縮時)と尿道) )
男性尿道(Urethra masculina、männliche Harnröhre)は長さの異なる4つの部分から構成されている。すなわち、壁内部・前立腺部・隔膜部・海綿体部(Partes intramuralis, prostatica, diaphragmatica, cavernosa)である。
前立腺部は前立腺に包まれており、長さは3〜3.5cm、平均直径は1cmである。中央部が最も広く、下端が最も狭い。また、前方に開いた弓状に僅かに湾曲している(図266(男性骨盤の正中断面))。
粘膜は弛緩時に縦走するひだを形成し、さらに不規則に配列した低い小さなひだも存在する。前立腺部後方には膀胱垂から連続する1つのひだがあり、これを尿道稜Crista urethralisと呼ぶ。尿道稜は尿道の隔膜部まで及び、その下端はしばしば二叉に分岐する。尿道前立腺部の中央で尿道稜は長く伸びた紡錘形の隆起を形成し、これを精丘Colliculus seminalis, Samenhügelという(図267(男性の膀胱の内面(強度収縮時)と尿道))。精丘の長さは約2cm、最大高さと幅は3〜4mmである。その両側には縦走する溝(精丘外側溝Sulci laterales colliculi)があり、この溝底に前立腺の多数の腺開口部が存在する(図267(男性の膀胱の内面(強度収縮時)と尿道))。尿道前立腺部は精丘によって内部Portio internaと外部Portio externaに区分される。
精丘頂上の中央には前立腺小室が開口し、その両側に射精管の開口部がある。これら3つの開口部はいずれも裂隙状を呈し、前立腺小室の開口部が最も広い(図267(男性の膀胱の内面(強度収縮時)と尿道)、図319(精丘を通る横断図))。
時折、射精管は前立腺小室の終端部に開口している。
尿道の前立腺部は単層の円柱上皮を有する。精丘の基礎構造として、中軸部に弾性線維の網からなる縦走索がある。これは膀胱三角でよく発達している縦走筋線維束と連続している。この弾性網の目の中には平滑筋の縦走する束がある。この縦走索は海綿状の組織、すなわち静脈血の入っている腔所を含む組織に包まれている。この組織は静脈腔を取り巻いて広がり、前立腺の腺体と同じ構造をした多数の小さい尿道周囲腺を有している。
粘膜の外側には筋層が続いている。その内側の層は平滑筋からなる縦走線維層であり、その外側には同じく平滑筋の輪走層が接している。
[図319]精丘を通る横断図(18倍)
1 前立腺小室、2 射精管(斜めに切断)、3 尿道腺、4 前立腺結石(Concretiones prostaticae)、5 精丘の海綿体部、6, 7 尿道の内表面(6と7の間は精丘外側溝)
[図320] ヒトの前立腺を通る断面図、精管の走行に対して横断方向
[図321]前立腺の腺体(強拡大)
[図322]男の尿道の海綿体部の中間部を通る横断面