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目次(IV. 内臓学)

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硬口蓋の骨性基礎は骨膜と粘膜に覆われている。これらの膜は硬口蓋の前部で密着し、前方および側方では歯肉(Gingiva, Zahnfleisch)へと移行する。

前方および側方の粘膜は厚く固く、白みがかっているが、後方に向かうにつれて薄く柔らかくなり、赤みを帯びてくる。正中線に沿って稜線、溝、または縫合と呼ばれる構造があり、これを口蓋縫線(Rhaphe palati)という。口蓋縫線は前方で切歯乳頭(Papilla incisiva)という小さな隆起で終わる。切歯乳頭は骨の切歯孔(Foramen incisivum)の直下に位置する(図079(硬口蓋と軟口蓋))。

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図079(硬口蓋と軟口蓋)

口蓋縫線の両側、硬口蓋の前方部では、粘膜が大小様々な低い横走する隆起を形成している。これを横口蓋ヒダ(Plicae palatinae transversae)といい、前方に凸の湾曲を示す。このヒダの数は個体により異なるが、前後に並び、いずれも横方向に伸びている。硬口蓋の後部では粘膜が骨膜から離れ、その間に粘液腺である口蓋腺(Glandulae palatinae)が発達している。さらに後方では軟口蓋の粘膜へと移行する(図079(硬口蓋と軟口蓋))。

切歯乳頭の両側には切歯管(Ductus incisivi)という2つの細い粘膜管が口腔に開口している。この粘膜管はしばしば退化して消失しているが、よく発達している場合は骨の切歯管(Canalis incisivus)を通って上方に進み、鼻腔に通じている。この粘膜管の消失は、ヤコブソン器官(Jacobsonsches Organ)が人間では退化していることと関連している。粘膜管はこの器官と密接な関係がある(鼻腔および感覚器の項を参照)。哺乳動物の中では、豚および反芻類でこの切歯管が最もよく発達している。骨および粘膜にみられる切歯管は、胎児初期に鼻腔と口腔が広範囲で連続していた名残である。

硬口蓋の粘膜には少数の低い(結合組織性)乳頭があり、後部ではやや密に存在している。これは他の口腔粘膜と同様に重層扁平上皮で覆われている。