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目次(VI. 感覚器)

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耳管軟骨部では粘膜と耳管軟骨とが区別される。耳管軟骨Cartilago tubae pharyngotympanicae, Tubenknorpelは1枚の軟骨で、その長さは2.3~3cmである。咽頭端では幅が約1cmと広く、厚さも2~5mmあるが、鼓室へ近づくにつれて幅も厚さも著しく減少する。この軟骨板は耳管の方向に沿って縦に走り、両側面はほぼ鉛直に立っている。上縁が外側へ反り返ることで半管(樋)が形成され、その中を耳管粘膜の管が走行する。耳管軟骨の樋は外側下方へ開口しており、この範囲では粘膜は1枚の線維膜のみで包まれる。この膜は膜性板Lamina membranaceaと呼ばれ、耳管軟骨の樋の部分も裏打ちしている(図666(左側聴覚器の概観図)図679(**ヒトの耳管とその周辺構造:**咽頭口付近の横断面))。

耳管軟骨の横断面は鈎状を呈し、その自由縁は円みを帯びて肥厚している。この外側部は外側板Lamina cartilaginiS lateralisと呼ばれ、耳管軟骨の鼓室端ではこちらが優勢で、内側板Lamina cartilaginis medialisは短い付属物のように見える。しかしこの関係は咽頭側へ進むにつれて逆転し、内側板が急速に発達して外側板が付属物のような様相を呈する。耳管軟骨の鼓室端は耳管骨部に接し、その粗造な端面に線維塊で強固に結合している。耳管軟骨の上壁は頭蓋底に固着し、前方は蝶形骨の舟状窩に、後方では蝶骨錐体裂の線維塊に付着している。

耳管軟骨の形態には著しい個体差があり、特に咽頭端でその差異が顕著である。咽頭端に至る前でも、血管を伴う軟骨膜の突起や粘膜腺の侵入により、軟骨に大小様々な裂隙が生じることがある。また、いわゆる耳管の過剰軟骨板 accessorische Knorpelplättchenは咽頭近位部でしばしば観察される。

耳管軟骨は基本的に硝子軟骨であるが、一部に線維軟骨の特徴を示す。咽頭端では弾性線維が比較的豊富で、様々な分布パターンを示している。