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目次(IV. 内臓学)

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図082(頭部顔面の矢状断(上方3個の頚椎を含む))

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図084(顔面頭蓋、咽頭、喉頭の正中面やや外側での矢状断)

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図182(鼻腔(左):鼻中隔を除去して開いた状態)

鼻腔は右と左に分かれており、鼻中隔Septum nasi, Nasenscheidewandがその境界となっている。つまり、鼻中隔は左右の鼻腔の内側壁でもある。鼻中隔は骨部Pars ossea、軟骨部Pars cartilaginea、および皮部Pars cutaneaに区分される。鼻腔の上壁は篩板と蝶形骨の下面を覆う粘膜で構成され、下壁は硬口蓋と軟口蓋の上面の粘膜で区切られている。前壁は外鼻の屋根部分に相当し、その下面に外鼻孔Nares, Nasenlöcherがある。後壁の上部は蝶形骨体の前壁からなり、下部は開口して後鼻孔Choanaとなっている。鼻甲介と副鼻腔の存在により、外側壁は複雑な形状を呈している(図082(頭部顔面の矢状断(上方3個の頚椎を含む)))。

左右の主鼻腔の前下部を鼻前庭Vestibulum nasi, Vorhofといい、ここは可動性のある鼻翼の内側に位置する。この鼻前庭で皮膚が粘膜へと移行する。外側壁には鼻限Limen nasiという顕著な隆起があり、前庭と鼻腔内部の境界を形成している。外鼻孔を囲む下部、特にその外側壁(および内側壁)には鼻毛Vibrissaeという短く硬い毛が生えており、格子状になって入口を守り、異物の侵入を防いでいる(図082(頭部顔面の矢状断(上方3個の頚椎を含む)))。

外側壁(図082(頭部顔面の矢状断(上方3個の頚椎を含む)))には下鼻[甲]介、中鼻[甲]介、上鼻[甲]介Concha nasalis inferior, media, superiorという3つの鼻甲介が上下に並び、やや前後方向にも配置されている。さらに、新生児では常に、成人ではより稀に最上鼻[甲]介Concha nasalis supremaが見られる。

上鼻甲介と中鼻甲介の間に上鼻道Meatus nasi superiorがある。中鼻甲介と下鼻甲介および鼻腔の外側壁との間を中鼻道Meatus nasi mediusといい、その前方に中鼻道前房Atrium meatus nasi mediiがある。また、下鼻甲介の下方と側方を占めるのが下鼻道Meatus nasi inferiorである。

鼻甲介と鼻中隔の間の空間を総鼻道Meatus nasi communisという。これら4つの鼻道および蝶篩陥凹は後方で鼻咽道Meatus nasopharyngicusに開口している。

蝶形骨体の前壁と下鼻甲介の間には、深さが様々な蝶篩陥凹Recessus sphenoethmoideusがある。ここに後方から蝶形骨洞Sinus sphenoideusが、粘膜に覆われた通常小さな穴(蝶形骨洞口Apertura sinus sphenoidei)を通じて開口している。上鼻道の天井部には後篩骨洞が、多くの場合1つか2つの開口部を持って開いている(図182(鼻腔(左):鼻中隔を除去して開いた状態))。

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図182(鼻腔(左):鼻中隔を除去して開いた状態)

中鼻甲介から1つの隆起が前上方に出て、鼻背と平行に前下方に進み、徐々に低くなって消失する。この隆起を鼻堤Agger nasiという。鼻の天井と鼻堤の間に篩板に向かって上行する溝があり、これを嗅溝Sulcus olfactoriusという。

中鼻甲介を取り除くと、ツバメの巣のような形で上方に開いている篩骨胞Bulla ethmoidea(図182(鼻腔(左):鼻中隔を除去して開いた状態))が認められる。その大きさは個人差が非常に大きい。またその壁に平行して、粘膜に覆われた鈎状突起の自由縁が走っている。篩骨胞と鈎状突起の間に半月裂孔Hiatus semilunalisがあり、ここは篩骨漏斗Infundibulum ethmoideum という短い漏斗状の管の上方開口部となっている。また篩骨漏斗の下方開口部は上顎洞裂孔Hiatus sinus maxillarisといい、上顎洞が開口する場所である。前頭洞は前上方から(約半数の例で)篩骨漏斗か半月裂孔に開口している。

残りの半数では、中鼻甲介の付着線の前部下方に独立して開口している。

中鼻道にはそのほか前篩骨洞も開口し、またその後部には一部の例において上顎洞にも通じる副上顎孔Foramen maxillare accessoriumがみられる。

副上顎孔は小児や若年者には存在せず、後年になって形成される。

下鼻道の前部には鼻涙管が下鼻甲介によって内側から覆われる箇所で開口している(視覚器参照)。

鼻腔の外側壁で咽頭との境には、上方に行くにつれて顕著になる後鼻孔弓Choanenbogenというひだがある(図182(鼻腔(左):鼻中隔を除去して開いた状態))。

耳管咽頭口Ostium pharyngicum tubaeは下鼻甲介を後方に延長したところにある。耳管咽頭口と中・下鼻甲介の後端との間に、下鼻道に続く鼻咽道Meatus nasopharyngicusという空間がある。これは前後方向には5~7mmしかないが、高さは25mmである(図082(頭部顔面の矢状断(上方3個の頚椎を含む))図182(鼻腔(左):鼻中隔を除去して開いた状態))。

外鼻孔から2cm奥の鼻腔底で鼻中隔に密接したところに切歯管の上端がある。切歯管は成人では通常袋小路となっており、口腔まで達していない(図082(頭部顔面の矢状断(上方3個の頚椎を含む)))。

この開口部の後方に縦の隆起があり、小さな鋤鼻軟骨(Jacobsonscher Knorpel)を持っている。この隆起は完全に鼻中隔に属している。その前端のすぐ上方に小さいが注目すべき管(ルイシュ管Ruyschscher Gang)が開口している。この管は軟骨に密接して後上方に進み、2~9cmの経過の後に盲端で終わるか、あるいは2本の枝に分かれてやはり袋小路となっている。Sömmeringがこの管をすでに認めていた。これは様々な哺乳動物においてよく発達しているヤコブソン器官または鋤鼻器(Jacobson)の遺残である。

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[図183] 甲状軟骨:男性の左側面図(縮尺9/10)。

[図184] 甲状軟骨:男性の前方からの図(縮尺9/10)。

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[図185]輪状軟骨披裂軟骨:男性の喉頭を前方から見た図(9/10倍)。

[図186]輪状軟骨披裂軟骨:同じく男性の喉頭を後方から見た図(9/10倍)。

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[図187]輪状軟骨と披裂軟骨:男性の喉頭を左側面から見た図(9/10)。

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[図188] 喉頭蓋軟骨:男性、後面(9/10スケール)。