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目次(VI. 感覚器)

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図605(右眼球の断面図)図607(角膜の横断面)図608(ヒトの角膜上皮の横断面)図609(角膜の上皮細胞(分離状態))図610(角膜の固定結合組織細胞:金染色を施した角膜小体)図611(家兎の角膜の基礎神経叢(金染色))

角膜は眼球外膜の約1/5を占め、凸面の外面(Facies externa)と凹面の内面(Facies interna)を持つ。前面中央部は角膜頂(Vertex corneae, Hornhautscheitel)と呼ばれる。

角膜の周縁部は角膜縁(Limbus corneae)と呼ばれ、ここで透明な角膜組織が白い強膜へと移行する。強膜の外層が角膜上にやや被さり、時に内層も伸びることがある。この場合、強膜にSklerafalz(板の縁のはめ込み溝)という溝が生じ、腕時計のガラスを押さえる蓋の溝のように角膜をはめ込む。

強膜外層は特に上下で伸びているため、角膜と強膜の境界線は横長の楕円形となる。その水平径は11.9mm、垂直径は11mmである(HelmholtzとKnapp)。(越智によれば日本人では水平径11.52mm、垂直径10.54mm)同著者らによると、角膜外面の湾曲も楕円体面を成す。水平経線は垂直経線より湾曲がやや弱い(Donders)。また、後面は前面より湾曲がやや強く、角膜中央部の厚さは0.8mmだが、角膜縁では1.1mmとなる。角膜の重さは180mgである(Huschke)。

角膜は次の層から構成される(図607(角膜の横断面) ):a)角膜上皮(Epithelium corneae)、b)外境界板(Lamina limitans externa)、c)角膜固有質(Substantia propria corneae)、d)内境界板(Lamina limitans interna)、e)前眼房内皮(Endothelium camerae anterioris)。

a)角膜上皮(Hornhautepithel)は重層扁平上皮で、5層の細胞からなり(H. Virchow)、全体の厚さは50~100µmである(図608(ヒトの角膜上皮の横断面) )。

Virchowは角膜全表面にわたり、角膜縁の上皮に移行するところまで、上皮の厚さが一定であることを確認した。

最深層は円柱状の細胞で、その底部には線条のある縁(足板)があり、小さな凹凸が外境界膜と噛み合っている(Langerhans)。円柱細胞の上には2層の多角形の小さな有棘細胞がある。表面の2層は扁平な細胞で、角化せず核を保持している(図608(ヒトの角膜上皮の横断面)図609(角膜の上皮細胞(分離状態)) )。上皮細胞間隙にはしばしば少数の遊走細胞が周囲に適応した形で存在する。最下細胞層では有糸分裂が規則的に起こり、表面から剥離する上皮の再生はこの層から行われる。(日本人では33例中15例で角膜上皮細胞内に微細な色素顆粒が認められ、その多くは基底層に、稀に表層の細胞にもある。(松岡秀夫、日眼会誌36巻10号、1932))

b)外境界膜(äußere Grenzhaut、ボウマン膜Bowmansche Haut)は厚さ20µmのガラス様透明層で、角膜縁に向かって急に消失する。過マンガン酸カリにより、この層が原線維から構成されることが示されるが、これは弾性線維ではない。H. Virchowによれば、この層は角膜固有質と同一物質でできていると考えられる。角膜上皮に至る神経はこの層を通過する。

c)角膜固有質(Substantia propria、図607(角膜の横断面) )は原線維性の基質とその中に存在する細胞から構成される。

膠原原線維が接合質によって厚さ8~10µmの扁平な層板にまとめられ、それが50~65枚重なり合っている。

各層板は角膜全体を覆うのではなく、様々な方向に交差する多数の層板が隣接している。異なる層の層板も完全に分離しているわけではなく、非常に鋭角で交織している。原線維束は各層板内で、角膜表面に平行な面上であらゆる方向に走行している。

角膜前面に近い部分では、原線維束が深層のものより繊細になっており、深層からの原線維群によって斜めまたはほぼ垂直方向に貫かれている。これがボウマンの支持線維と呼ばれ、外境界膜で消失する。

交織する原線維の層板間には、豊富な液細管系が発達している。この体液路系には透明な液体と2種類の細胞—角膜細胞(結合組織の固定細胞に相当する、図610(角膜の固定結合組織細胞:金染色を施した角膜小体) )と遊走細胞(リンパ球)—が含まれる。

角膜細胞は液腔の一方の壁に密接して存在し、内皮細胞の様相を呈している。比較的大きな液間隙では、2~3個の扁平な細胞が辺縁を接して並ぶことがある。酸やその他の薬品で処理すると、細胞が付着した嚢を遊離させることができる。これは角膜小体と呼ばれ、弾性を持つ液腔壁の層とその一側に付着する角膜細胞から構成される。遊走細胞は固有質内に常に存在するが、その数は一定ではない。

d)内境界板デスメ膜図607(角膜の横断面) )は、新鮮な状態では無構造に見え、特別な構造を示さない非常に薄い層板の集合体である。この層板は(例えば10%NaClで)分離可能である。内境界板は中央で最も薄く、辺縁に向かって厚くなり、機能的には毛様体筋の中心腱とみなされる。

内境界膜はアルカリや酸、熱湯に対して強い抵抗力を持ち、外境界膜よりも容易に固有質から剥離できる。剥がれると前方へ巻き上がる。

e)前眼房の内皮図607(角膜の横断面) )は、接合質と細胞間橋によって結合された扁平な結合組織細胞の単層からなる。核は主に中央にあり、球形または楕円体形で、これを囲む細胞体部分とともに前眼房に突出している。