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目次(VI. 感覚器)

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図612(脈絡膜の渦静脈)、613(脈絡膜の動脈)

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図614(毛細血管板)

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図615(ヒトの脈絡膜)

脈絡膜は暗赤褐色の膜状の被覆で、血管と色素を豊富に含み、厚さは0.05~0.08mmである。Mörike(1949)によると、眼球後極で0.22mm、黄斑で0.26mmの厚さがある。視神経の侵入部から鋸状縁(Ora serrata)まで伸び、そこで徐々に毛様体へ移行する。視神経侵入部では脈絡膜に円形の穴があり、ここで強膜と強固に結合している。

脈絡膜の内面は平滑だが、外面は強膜を剥がすと脈絡外層(Stratum perichoroideum)という疎な組織があるため、毛羽立っている。この疎な組織は相互に連結する多数の空隙を囲み、脈絡膜と強膜を結合している。両膜は容易に剥離できるが、黄斑部ではやや固く結合している。強膜と脈絡膜の間の空隙系統は眼のリンパ路に属し、脈絡外隙(Spatium perichorioideum、Perichorioidalraum)と呼ばれる。

脈絡膜は次の4層から構成されている(図615(ヒトの脈絡膜)

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図615(ヒトの脈絡膜)

  1. 脈絡外層は互いに鋭角をなして結合する多数の層板(Lamellen)からなり、横断面でみるとこの層板の数は5〜6層である。これらの層板の間に上述の脈絡外隙がある。各層板は弾性線維の網で構成され、色素を持つ多数の扁平な結合組織細胞が、散在または集団的にこの網に付着している。層板の片側または両側が内皮細胞で覆われている。

    脈絡外隙を貫いて走るものには、毛様体神経(Nn. ciliares、15〜18本)、虹彩動脈(Aa. iridis、2本)、脈絡膜動脈(Aa. chorioideae、約20本)がある。また、赤道部では渦静脈(Venae vorticosae、通常4本)が見られる。

  2. 血管板(Lamina vasculosa、図615(ヒトの脈絡膜) )は脈絡膜固有の動静脈の多くの枝が、色素細胞と弾性線維を含む結合組織の層板が密に重なり合って交織したものによって結合され、全体として緻密な組織となっている。最も目立つのは静脈の分枝の状態である。脈絡膜・毛様体・虹彩からの血液を集める比較的太い静脈が、ほぼ眼球の赤道部で、互いに90°の間隔を持つ4箇所に集合するのが一般的である。これらの静脈は四方八方から放射状に集合血管に注ぎ込み、4箇所にそれぞれ渦静脈(V. vorticosa、Wirbelvene)を形成する。隣接する渦静脈の枝は、眼球の後部で弓状につながり合っている。

    しかし、静脈の集合部は必ずしも90°ごとの位置にはなく、非常に接近していることもある。そのような場合、1つの渦静脈が重複しているように見えることがあり、時には2つが合して1個の渦静脈になることさえある。あるいは両者の距離がさらに離れているときには、5〜6個の渦静脈が現れることもある。渦静脈の幹はまず脈絡外隙を、次いで強膜を貫く。脈絡膜の静脈は血管周囲鞘で包まれており、この鞘と血管壁の間にリンパ腔がある。眼球の前部(鋸状縁から赤道まで)では渦静脈の枝が血管板の表層を占めるが、眼球の後部では脈絡膜動脈(Aa. chorioideae)がそれより表層にある。脈絡膜動脈はその大部分が視神経の外側で眼球内に入るが、少数のものは内側から入る。脈絡膜動脈はすべて脈絡膜の毛細管網に移行する(図612(脈絡膜の渦静脈)、613(脈絡膜の動脈) )。脈絡膜の動脈ははっきりした輪走筋を持ち、さらにその両側に縦走する平滑筋束がある。側方の縦走線維束はしばしば眼球の後部で、平滑筋線維の網によってつながり合っている。この点において、脈絡膜の筋性成分という概念は適切である。鳥類では脈絡膜の後部に横紋筋線維の網があり、これは脈絡膜筋(Musculus chorioideae)と呼ばれる。

  3. 毛細管板(Lamina capillarium)またはChoriocapillaris(図614(毛細血管板)図615(ヒトの脈絡膜))は毛細血管の密な網であり、この網は色素を持たない結合組織の中に広がり、視神経の侵入部から鋸状縁にまで達している。この毛細管網は脈絡膜動脈からの多数の細い枝から血液を受け、特に血管のない網膜の外層の部分を養う役目をしている。

    網膜の黄斑のところでは網の目が特に細かくなっている。毛細血管網から小さい静脈の起こるところは、その形が渦静脈を思わせる。この毛細血管は強膜の節状野のところで視神経の毛細血管につながっている。毛細血管網の間の組織はごくわずかで、ここには外膜細胞と遊走細胞だけがある。その間隙は静脈のリンパ路と続いている。

    毛細血管板とそれより太い血管が集まっている層との間には、細かい弾性線維網からなる境界層(Grenzschicht)があり、ここは大抵色素を持たない。

  4. 基底板(Lamina basialis、図615(ヒトの脈絡膜))は厚さ2µまでのガラスのように透明な層で、毛細管板と密着している。時折これに2層が認められ、その場合には外層は網状ないし格子状の構造をしている。基底板は年を取ると肥厚するのが普通で、ところによって石灰化することがある。

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図614(毛細血管板)

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図615(ヒトの脈絡膜)

脈絡膜の神経:長および短毛様体神経が脈絡外隙の中を前方へ走り、それぞれ角膜・毛様体筋・虹彩への枝に分かれる。その途中で有髄および無髄神経からなる細い枝を順々に出し、これらが脈絡外隙の中で、神経細胞を含む神経叢を形成する。脈絡膜自身に終わる神経は、そこの血管に分布するのである。