肺循環系の動脈は、その分布域が空間的に狭く、移行する毛細管系も比較的小さいため、内部圧が体循環より低い。そのため、一般に体循環の動脈に比べて壁の発達が弱い。

動脈の壁の厚さは、通常、血管自体の大きさに応じて変化するが、比例関係ではない。例えば、2倍の太さの血管が必ずしも2倍の壁厚を持つわけではない。さらに、壁の厚さの変化に対する各成分の寄与は均一ではない。一部の成分、特に筋成分は、血管の拡大に伴い相対的に減少する。これは、血管の増大とともに弾性線維が増加するためである。

具体例を挙げると、上行大動脈の壁の厚さは約1.6mm、肺動脈は1.1mm、腕頭動脈と総腸骨動脈はともに0.3mmである。内膜は最大の動脈でも、平均して0.03mmの厚さしかない(Henle)。ただし、高齢になるとその厚さが3~4倍に増加する。

外膜の厚さは通常0.3mmから0.4mmの範囲で変動するが、この厚さは高齢になってもわずかな増加にとどまる。