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目次(IV. 内臓学)

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I. 全身に対する位置関係:肝臓は上腹部に位置し、右外側部と内側部を占め、左葉が左外側部に及んでいる。

II. 骨格に対する位置関係:肝臓の上限は以下の通りである。 • 前方:右側では乳頭線と胸骨傍線の間で第5肋軟骨が胸骨に付着する高さ • 正中では剣状突起の底 • 左側では胸骨傍線で第6肋軟骨が胸骨に付着する高さ

横隔膜の右半がより上方に突出しているため、肝臓の右葉は左葉よりも上方に達している。左葉は多くの場合、正中線から左に約7cm延びている。

後方への投射: • 肝臓上限:第9胸椎体下部 • 椎骨傍線(Linea paravertebralis):第10肋間隙 • 腋窩線:第7肋間隙 • 肝臓下限:後方で第11胸椎体中央

肝臓前縁の走行: 脊柱から右第12肋骨縁に沿って進み、肋骨弓に沿って第9肋骨と第8肋骨の接合部で右肋骨弓から離れる。その後、左上方に斜めに上腹部内側部を通り、第8肋骨と第7肋骨の接合部で左肋骨弓に達する。

III. 近接器官との位置関係: • 上方:横隔膜に接し、その上に右左の肺、中央に心臓と心膜がある • 内臓面:胃前面の一部と小弯、十二指腸上部と下行部の一部、右結腸曲を覆う • 右側:右腎臓上部と右副腎も覆う

これらの近接器官により肝臓に圧痕(Impressiones)が形成される。これは接触面(Facies, Berührungsfelder)とも呼ばれる(図137(肝臓の内臓面と他の器官との接触部位)図139(肝臓の内臓面))。圧痕には食道圧痕・胃圧痕・十二指腸圧痕・結腸圧痕・腎圧痕・副腎圧痕(Impressiones oesophagica, gastrica, duodenalis, colica, renalis, suprarenalis)がある。

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図137(肝臓の内臓面と他の器官との接触部位)

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図139(肝臓の内臓面)

年齢による下降:高齢者では肝臓が1肋骨分下方に位置し、これは横隔膜高の変化と一致する。Vogt(Verh. anat. Ges., 1921)によると、肝臓の下降は4〜6 cmである。女性では肝臓がやや低位にある傾向がある。

肝臓の位置は呼吸運動や体位により、正常範囲内で変化する。直立や座位で、かつ吸気時の横隔膜状態では、仰臥位や呼気時よりも肝臓前縁が肋骨弓で下方に突出する。また、肝臓は横隔膜の円蓋に密着しているため、横隔膜収縮時にその形状がある程度変化する。