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図231(上皮小体:25歳男性の小胞形成)、232(新生児の甲状腺と胸腺)
胸腺は生後最初の数年間のみ完全な発達を示し、特に2〜3歳頃に最も発達する。その後、長期間にわたり成長がほぼ停止し、性的成熟期に入ると退縮が始まるが、高齢期まで存在し続ける(Waldeyer, Hammar)。幼少期には胸腺はリンパ球産生の主要な場所の一つだが、成人になるにつれてその役割は徐々に減少する。
成人の胸腺は左右各1つの細長い右葉と左葉Lobus dexter, sinisterから構成され、頸部下端から胸腔上部に及ぶ。胸腔内では前縦隔に位置し、大血管と心膜嚢の前方、左右の胸膜縦隔部の間に存在する。また、気管の前方を頸部へ向かって上行する。左右両葉は正中線で接し、ほぼ対称的だが、左葉または右葉が大きい場合もある。両葉を連結する部分がしばしば見られ、時に両葉が広範囲にわたって連続することもある(図120(単純細胞および顆粒細胞)、121(パネート細胞)、122(基底顆粒細胞))。
図120(単純細胞および顆粒細胞)、121(パネート細胞)、122(基底顆粒細胞)
**局所解剖:**通常、胸腺は上方で甲状腺下縁に達する。結合組織が胸腺底部を心膜嚢に固定し、前面は緩やかな凸面を形成して胸骨上部に密接する。新生児では第4肋軟骨まで達する。結合組織が胸腺を上記諸器官に付着させ、さらに上方では大動脈弓とその枝、左腕頭静脈、気管にも結合する。外側縁は内胸動静脈付近で胸膜縦隔部に接し、頸部では太い血管を包む鞘に接する。内側縁は結合組織によって左右両葉が互いに連結している。
大きさ:出生時の胸腺は長さ5~6cm、底部の幅3~4cm、厚さ1cm、重さ15~20gである。2歳では25~28g、思春期では37gに達する。比重は当初1.05だが、脂肪含有量の増加に伴い減少する。実質は約85%の水分を含む。
Hammarの20年間の研究によると、胸腺実質の平均重量は以下の通りである: • 5歳まで:19.82g • 6~10歳:21.88g • 11~15歳:20.97g • 16~20歳:13.85g • 21~25歳:10.05g • 36~45歳:3.79g 47歳以降はさらに減少する。
日本人の胸腺平均重量(石橋松蔵、日病理会誌6、大正5年): 新生児9.52g、1歳6.08g、5歳12.22g、10歳14.41g、15歳16.28g、20歳11.95g、25歳11.52g、30歳9.52g、31~35歳10.46g、36~40歳8.50g、41~45歳8.48g、46~50歳8.51g、51~55歳9.51g、56~60歳6.49g、60~70歳7.02g、70歳以上6.50g。
佐藤文一(東京医大誌8巻3号)による男女別の平均重量: • 1~30日:男18.28g、女16.35g • 3~5年:男32.19g、女30.50g • 6~9年:男33.75g、女26.14g • 10~14年:男30.35g、女22.45g • 16~19年:男31.26g、女27.85g • 20~29年:男26.37g、女24.89g • 30~39年:男24.85g、女21.91g • 40~49年:男23.23g、女23.75g • 50~59年:男20.00g、女20.84g • 60年以上:男19.68g、女18.21g構造:薄い結合組織の被膜が左右両葉を包む。被膜を除去すると多数の扁平な小葉が現れる。小葉の直径は0.5~1.0cmで、柔らかな結合組織と脂肪によって結合され、全体として相互に連結している。中心索(Tractus centralis)という索状の共通組織に続き、この索内を太い血管が走行する。
この2次小葉を胸腺小葉(Lobuli thymi)と呼び、さらに小さな西洋ナシ形で円みを帯びた扁平な1次小葉から構成される。1次小葉は密に集まり、多くは瓦のように重なり合うか、あるいは疎に連結している。1次小葉自体は、さらに小さな基礎小葉(Grundläppchen)という実質の塊から成る(図227(**胸腺右葉の横断図:**37歳男性) )。
基礎小葉は次の2つに区分される:
基礎小葉の組織は細網性の土台と多数の小さい細胞から構成されており、リンパ性結合組織に極めて類似している。