粘膜は全体的に薄く、白みがかったバラ色または黄紅色を呈している。固有層は弾性線維が豊富で、場所によって量は異なるがリンパ球が存在し、それらが集まって喉頭リンパ小節Lymphonoduli laryngiciと呼ばれる孤立リンパ小節を形成している。上皮はほぼすべてが多列線毛上皮で、その線毛は咽頭方向に運動する。ただし、喉頭蓋の後面、披裂軟骨の内面、および声帯ヒダ(図201(声帯ヒダと室ヒダの横断面))には重層扁平上皮が存在する。声帯ヒダの固有層には縦走する隆起が多数あり、横断面で見ると乳頭と誤認されることがある。喉頭蓋の前面には多数の乳頭がある。これら2箇所を横断すると、上皮のすぐ下にガラスのように透明で繊細な基底膜が見られる。喉頭蓋の上皮には少数の味蕾が散在していることが知られている。
喉頭蓋の後面と披裂軟骨の内側では粘膜がしっかりと固定されている。側方部の下面では粘膜の付着が弱く、特に披裂喉頭蓋ヒダの部分でその傾向が顕著である。
この部位では粘膜が多量の疎性結合組織に覆われており、突然の窒息をもたらす危険な浸潤(声門水腫Glottisödem)が起こりやすい傾向がある。
喉頭粘膜の粘膜下組織は弾性組織が豊富で、全体が喉頭弾性膜Membrana elastica laryngisと総称される(139頁参照)。
喉頭の粘膜には多数の喉頭腺Glandulae laryngicaeが存在する。
喉頭腺は声帯ヒダの直近には存在しない。特に3箇所に集中しており、それらは次の場所である:上方群は喉頭蓋の後面(50個以上)と隣接する喉頭蓋ヒダ部分、中央群は室ヒダ内(図201(声帯ヒダと室ヒダの横断面))、後方群は左右の披裂軟骨および小角軟骨の間である。
混合腺と漿液腺の2種類がある。混合腺は管状胞状腺でジアヌッチ半月Gianuzzischer Halbmondを有する。漿液腺は管状腺である。