https://funatoya.com/funatoka/Rauber-Kopsch.html

目次(IV. 内臓学)

funalogo.gif


外層は腟傍結合組織(Paracolpium)と呼ばれ、かなり密な結合組織からなり、平滑筋線維を含む。腟の下部は隣接する諸器官(膀胱、尿管、直腸)と強固に結合している。

中層は筋層(Tunica muscularis)であり、平滑筋線維束が絡み合って構成されている。

Schreiber(Arch. Gyn., 174. Bd., 1942)によると、腟の平滑筋は立体的な格子を形成し、その目は菱形で腟の縦軸方向に急傾斜のらせんを描いている。筋束は後壁よりも前壁でより発達している。

内層、すなわち粘膜(Tunica mucosa)は、その表面に多数の横走する稜状の隆起、腟粘膜ヒダ(Rugae vaginales)があり、特徴的な形態を示している。

腟粘膜ヒダは腟壁の前後の内面に、腟口から始まり正中線に沿って各1本の隆起を形成している。この隆起は上方に伸びており、腟口付近でより顕著になる。これを前・後皺柱(Columna rugarum ventralis et dorsalis)という。

前後の腟皺柱は通常、発達の程度が異なり、正確に向かい合っているわけではない。そのため、腟が閉じているときには互いに接触せず、隣り合って位置している。前腟皺柱の下端がかなり深い溝で2つに分かれていることもあり、この場合、後腟皺柱がそこに入り込む。前腟皺柱は外尿道口近くの腟前壁下端で、しばしば2分した強い隆起部、腟尿道隆起(Carina urethralis vaginae)として始まり、上方に向かうにつれて徐々に低くなる。後腟皺柱の下端は通常、それよりやや上方に位置する。

粘膜は小さな乳頭を持ち、これが上皮で覆われている。乳頭を持つ粘膜固有層は細い結合組織束が絡み合い、少量の弾性線維とリンパ球(量は様々)が混在している。また、腟リンパ小節(Lymphonoduli vaginales)が散在している。上皮は重層扁平上皮で、子宮腟部の上皮に連続している。腺は存在しない。上皮には遊走中のリンパ球が見られる。

腟の粘液は酸性で、脱落した上皮細胞とリンパ球を含み、原虫類(Infusorien、腟トリコモナス Trichomonas vaginalis)が存在することも少なくない。