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片山正輝

目次(I.骨格系)

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基本構造

解剖学的特徴

機能的構造

側頭鱗Squama temporalisは内側が凹面を呈する円板状の骨板で、側頭面Facies temporalisと大脳面Facies cerebralisの2面を有する。側頭鱗は頭蓋の側壁において頭頂骨と蝶形骨の間を補完し、これらの骨との結合部を頭頂縁Margo parietalisと蝶形縁Margo sphenoideusという。

側頭鱗の縁は主に内面が削られて鋭縁となり、内面より外面が広い。蝶形骨大翼に接する蝶形縁のみが鋸歯状を呈する。内面大脳面Facies cerebralis)には脳回圧痕Impressiones gyrorumと脳隆起Juga cerebralia、および前部縁に沿って中硬膜動脈溝が存在する。外面側頭面Facies temporalis)は上部が緩やかに湾曲し、側頭筋起始部として粗面を形成する。外耳孔付近には上行性の血管溝である中側頭動脈溝Sulcus arteriae temporalis mediaeがあり、側頭面は側頭窩壁の一部を構成する。前方に延びる長大な突起を頬骨突起Processus zygomaticus, Jochfortsatzという。この突起は基部が幅広く上下両面を持ち、先端に向かって細まりながらねじれ、内側面・外側面・上稜・下稜が明瞭となる。上稜は鋭利で最前方に突出し、その前端は斜めで鋸歯状を呈して頬骨と結合する。頬骨突起は後方で臨床上重要な側頭線Linea temporalisに移行する。その下方の外耳孔後上隅には、80%の例で**[外耳]道上棘**Spina supra meatumが認められる。

下方から観察すると、頬骨突起基部に関節結節Tuberculum articulareが存在する。その後方には左右に延びる卵円形の陥凹があり、これが下顎骨の関節窩である下顎窩Fossa mandibularisである。これを被覆する軟骨は関節結節表面に直接連続し、丘陵状の関節面を形成する。この関節窩後方には関節後突起Processus retroarticularisという隆起があるが、通常は低く、個体差が著しい。さらに後方には、外耳道の上壁を形成する側頭鱗の重要部分が続く。この部分は下顎窩同様に陥凹し、深部(鼓室方向)では鼓室切痕Incisura tympanicaとなって終わる。側頭鱗の前上方には前頭骨に達する突起(側頭鱗の前頭突起Processus frontalis squamae temporalis)があり、これにより蝶形骨大翼が頭頂骨から隔てられることがある。この突起は現代人よりも古人類においてより高頻度に出現する。