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図277(単層の卵胞上皮を持つ二次卵胞)、278(多層の卵胞上皮を持つ二次卵胞)
卵は成熟時、直径0.17~0.22mmの球形細胞である。小胞状の核は細胞中心近くにやや偏在し、その直径は30~45µである。核は静止期にクロマチン網を持ち、核壁近くに1個の核小体が存在する。
左右の卵巣における卵の総数はHäggströmによると400,000個を超え、そのうち50µ以下の卵胞は388,000個、100µ以上の卵胞はわずか219個である。
核を2個持つ卵と1個持つ卵の比は1:416である(Upsala Lakare förenings förhandlingar. Ny följd., 26. Bd., 1921)。Stieveによれば、保存包埋標本における人の成熟卵は透明帯を含めても直径0.11~0.14mmである(Z. mikr.-anat. Forsch., 53. Bd., 1943)。Warren H. Lewis(Bull. J. Hopkins Hosp., 48. Bd., 1931)は、未固定の人卵管中の未受精卵について、完全な球形ではなく、透明帯を含む直径は0.145~0.151mm、透明帯を除くと0.136mmであったと報告している。
卵の核は従来から胚小胞Vesicula germinativa, Keimbläschenと呼ばれ、核小体は胚斑Macula germinativa, Keimfleckと称される。卵の原形質は卵黄Vitellus, Dotterと呼ばれる。卵黄は発育の一定段階以降、ガラス様の透明な透明帯Zona pellucida(卵膜Oolemmaともいう)に囲まれる。透明帯の厚さは7~12µで(図280(透明帯と放線冠をもつ成熟卵))、同心性の微細な条紋と密に配列した放射状の小孔を有する。卵黄は淡黄色で、淡色の多数の粒子が散在する原形質から構成される。この粒子は副形質Deutoplasmaとして原形質Protoplasmaと区別される。
若い卵は卵胞帯内で1層の扁平な卵胞細胞Follikelzellenに囲まれ、これにより周囲の線維性結合組織と境界される。この段階の卵は周囲の細胞とともに原始卵胞Folliculus ovarii primariusと呼ばれる(図273(ネコの卵巣の横断図)、274(原始卵胞))。
原始卵胞はこの状態で数十年間、いわゆる"第1静止期erste Ruheperiode"を維持できる。"第1成長期erste Wachstumsperiode"は卵母細胞の形成開始から原始卵胞の形成までの期間である。
"第2成長期zweite Wachstumsperiode"では原始卵胞から2次卵胞を経て、直径5~8mmの胞状卵胞が形成される。この時期の卵細胞は0.1~0.13mmの大きさに達する。
原始卵胞の1層の扁平な卵胞上皮細胞は数を増し、層数も徐々に増加する(図277(単層の卵胞上皮を持つ二次卵胞)、278(多層の卵胞上皮を持つ二次卵胞)、図279(2次卵胞))。この段階の卵胞を2次卵胞Folliculi ovarii secundariiという。卵胞細胞間に小さな隙間が形成され、皿状に広がる。周囲の卵胞細胞は液体を分泌し、一部は核分解を経て液体に溶解する。この液体を卵胞液Liquor folliculiと呼び、隙間の拡大とともに量を増す。卵は多数の卵胞細胞に包まれ卵胞壁に押しつけられ、卵胞細胞は増殖を続ける。当初充実していた卵胞は、やがて大きな胞状卵胞Folliculus ovarii vesiculosus, Bläschenfollikel(グラーフ卵胞Graafscher Follikel)となり、直径は8mmに達する。卵は卵胞内で卵巣表面の反対側に位置し、卵胞細胞に包まれている(図273(ネコの卵巣の横断図)、274(原始卵胞)、図279(2次卵胞))。
この過程で卵も発育し、透明帯が厚くなる。同時に卵巣間質から卵胞上皮を包む被膜が形成される。これを卵胞膜Theca folliculiという。発達した卵胞では、この被膜は細胞と血管に富む内側の内層Stratum internumと、より強靱で線維に富む外側の外層Stratum externumに区別される。Stieve(1943)によると、胞状卵胞はこの状態を数ヶ月維持し、この期間を"第2静止期zweite Ruheperiode"と呼ぶ。
したがって、グラーフ卵胞は以下の構造からなる:1. 外側の結合組織被膜である卵胞膜Theca folliculi(内側部分は血管とリンパ管が豊富)、2. 卵胞壁にある多層の卵胞上皮、すなわち卵胞顆粒層Stratum granulosum folliculi(略して顆粒層Granulosaとも呼ばれる)、および卵を含み卵胞腔に突出する卵丘Cumulus oophorus, Eihügel、3. 卵胞液Liquor folliculi。
卵巣内での卵胞の分布については、既述の通り、最小の卵胞(約40µm)の大多数が卵胞帯に存在する。やや大きい卵胞はそれより深部に散在している。直径0.5〜0.6mmのかなり大きな卵胞も存在し、通常1列に並んでおり、発達した卵巣では50から200個、あるいはそれ以上見られる。
次に「成熟期」(Reife Periode)が続き、これは卵胞破裂までの期間である。この時期、卵胞は短期間で急速に成熟し、直径は15mm以上に達する。顆粒層の細胞も増殖し、8〜16層に重なる。卵丘もより細胞が豊富になる。卵巣表面に隆起した卵胞壁の一部に単層上皮の領域が現れ、ここで卵胞膜が非常に薄くなり、卵胞破裂が起こる。破裂時、卵は放線冠(Corona radiata)と呼ばれる2〜3層の密集した卵胞細胞に包まれたまま押し出される。これが排卵(Ovulation)であり、卵はその後卵管に到達する。卵管で受精し発達を続けるか、または受精せずに体外に排出される。
性的に成熟した女性では、グラーフ卵胞の成熟は周期的に起こる。通常28日間、つまり月経開始から次の月経開始までの性周期(Zyklus)の間に1つの卵胞が完全に成熟する。完全に成熟したグラーフ卵胞は破裂し、これは多くの場合、月経周期の第14〜16日目に起こる。ただし、Stieveによれば排卵はどの日でも起こり得るという。
卵自体はまず卵管に入り、その後子宮に達する。一方、破裂した卵胞の上皮からは、個々の細胞の容積増大のみによって(細胞数は増加しない)黄体(Corpus luteum, Gelbkörper)(図281(黄体))が形成される。この過程には卵胞の結合組織壁も関与する。黄体の直径は約1cmに達することがある。その中心は当初、血液で満たされた腔所である。後に出現するヘマトイジンの結晶は、最初に流出した血液が変化して生じたものである。
黄体は初期には赤体(Corpus rubrum)と呼ばれるが、2日目、遅くとも3日目には黄体へと変化する。同時に、肥大した卵胞細胞内に多数の脂肪粒子が出現し、血液が吸収され、続いてルテイン細胞による黄色調が明確になる。これがいわゆる「開花状態」(Zustand der Blüte)である。この状態の持続期間はまだ確定していない。その後、血管が減少し黄体が萎縮、脂肪化が起こって退縮する。最終的に結合組織性の白い痕跡が残り、これを白体(Corpus albicans)という。初期の出血の残留物が多い場合、かつての解剖学では黒体(Corpora nigra)と呼んでいた。黄体は妊娠黄体(Corpus luteum graviditatis)と月経黄体(Corpus luteum menstruationis)に分類される。妊娠黄体は、その卵胞から排出された卵子が受精し、子宮内で発育している際に生じる。月経黄体は持続期間が短く、サイズもより小さい。
最終月経時に成熟していた卵が受精したのか、あるいは最初の月経欠落時の卵が受精したのかという問題については、現在も諸説ある。これら二つの可能性があるが、婦人科手術の結果によれば後者の見解が正しいとされる。妊娠時の胚発生を観察すると、月経後に成熟した卵の方が適合する。
卵巣内のすべての卵胞が成熟するわけではない。左右の卵巣には、退縮を始めた様々な大きさの未破裂卵胞が見られる。卵胞の退行という重要な現象については多くの研究がなされ、卵胞閉鎖(Atresia folliculi)と呼ばれている。その結果として閉鎖体(Corpus atreticum)が形成される。グラーフ卵胞間の結合組織は卵巣支質(Stroma ovarii)と呼ばれ、その結合組織細胞は短く、紡錘形または円味を帯びた形状で、突起を持つものと持たないものがある。さらに、血管に沿って比較的長い線維性結合組織束があり、これらは弾性線維を含む。また、Ferner(Z. Gynäk., 1951)によれば格子線維の網状構造も存在する。
髄質、すなわち門支質(Hilus-Stroma)と呼ばれる基底層は、主に線維性結合組織で構成されている。
この結合組織は比較的太い束を形成して血管に沿って走り、動脈の周囲では平滑筋も含んでいる。
卵巣門の組織内には、主に神経の近傍や内部に、大型の細胞群が存在する。これらの細胞は形態学的に精巣の間細胞(Zwischenhoden-zellen)と同様の特徴を有している。これらの大型細胞は、後者と同じく、様々な大きさの細胞内粒子の集合体を持ち、細い線維からなる結合組織の膜に包まれている。また、リポイド粒子や色素粒子、さらにはラインケ結晶(Reinkesche Krystalle)も含んでいる。このため、これらの細胞は「腺外性女性間細胞」(extraglanduläre weibliche Zwischenzellen)と呼ばれている(Endokrinologie, 1. Bd.)。
[図277]1層の卵胞上皮をもつ2次卵胞 21歳女性の卵巣から。×200
[図278]多層の卵胞上皮をもつ2次卵胞 21歳女性の卵巣から。×200
[図279]2次卵胞 32歳女性の卵巣から。卵胞液、卵丘、放線冠を示す。×100
[図280]透明帯と放線冠をもつ成熟卵:破裂直前の卵胞から得たもの。38歳女性。×250倍 (Stieve, H., Z. mikr.-anat. Forsch., 53巻, 1943年より)
[図281]黄体:卵胞破裂後14日目(性周期28日目)。倍率5倍。