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(RK211(**後頭骨:**内側面) 、RK212(頭頂間骨)、213(3分割インカ骨) 、RK214(後頭骨の外面) 、RK215(側頭骨の後面および隣接する後頭骨の部分) )
後頭骨は頭蓋の後下部を形成する、菱形に近い強く湾曲した板状の骨である。その前下方部には大後頭孔(Foramen occipitale magnum, Hinterhauptloch)という大きな卵円形の孔があり、これによって頭蓋腔は脊柱管とつながる。大後頭孔の前方には短く厚い骨部があり、これを底部Pars basialis(体Körper)という。大後頭孔の両側には結節状の関節突起をもつ部分があり、外側部Partes lateralesという。大後頭孔の後方部分は後頭鱗Squama occipitalis, Schuppeと呼ばれる。
体は前上方に突出し、前方では厚いが後方では薄く鋭い縁をなす。その外面(下面)中央には低い隆起があり、これを咽頭結節Tuberculum pharyngicumという。この結節の両側には、筋肉付着のためのざらざらした部位が左右一つずつある。体の上面は左右が高まり、その間がやや凹んでおり、蝶形骨との境界部と共に斜台Clivusという斜面を形成する。凹凸に富む側縁に沿って、錐体溝Sulcus petrosusという細い溝があり、これは下錐体静脈洞の一部を収容する。鋭い後縁は滑らかな弧を描いて大後頭孔の前縁を形成する。体の前面は四辺形の粗面で、蝶形骨体との接合面をなし、後年にはこれと癒合する。
外側部は後方で広く薄く、前方では狭く高い。その外面には、大後頭孔のすぐ脇に、関節面をもつ隆起が左右一つずつあり、これを後頭顆Condylus occipitalisという。左右の後頭顆の後端を結ぶ線は大後頭孔の中央を通る。関節面は長さが幅のほぼ2倍あり、前後方向では強く、左右方向では弱く湾曲した凸面をなし、その面はかなり外側を向いている。左右の関節面の長軸は前方へ行くほど互いに近づく。
後頭顆の後方には、それぞれ一つの窪みがあり、顆窩Fossa condylicaと呼ばれる。ここには顆管Canalis condylicusという静脈の通る管の後方開口部があるが、この開口は常に存在するとは限らない。顆管の前方開口部はS状洞溝内にある。顆窩の上方には第12脳神経が通る短い太い管があり、舌下神経管Canalis n. hypoglossiという。外側部の側縁は後方では厚く凹凸に富むが、前方では頚静脈切痕Incisura jugularisによって深く刻まれている。頚静脈切痕には前方に棘が一つ突出しており、側頭骨の同様の棘と向かい合い、[頚静脈]孔内突起Processus intrajugularisと呼ばれる。
後頭顆の外側にある骨板は外面に凹凸があり、時に乳突傍突起processus paramastoideusという鈍い突起を持つ。一方、その上面(内面)では、頚静脈突起Processus jugularisの上部が顕著に突出し、S状洞溝へ向かって傾斜している。舌下神経管の上方前方で、この管の屋根部分に小さな隆起があり、これを頚静脈結節Tuberculum jugulareという。
後頭鱗の外面中央には、表面がざらざらした隆起があり、外後頭隆起Protuberantia occipitalis externaと呼ばれる。この隆起から大後頭孔に向かって、正中部を1本の隆起線が細くなりながら伸びる。これが外後頭稜Crista occipitalis externaで、外後頭隆起とともに項中隔の付着部となる。外後頭隆起から側方へは分界項線Linea nuchalis terminalisが伸びる。分界項線のさらに上方に、より細く強く湾曲した界上項線Linea nuchalis supraterminalisが見られることがあり、これらの間に左右1つずつ鎌形の領域が形成されることがある。
分界項線の下方には、これに平行して凹凸のある項平面線Linea nuchalis terminalisが走り、外後頭隆起と十字に交差する。分界項線より上の滑らかな領域は後頭平面Planum occipitaleと呼ばれる。また分界項線より下の広い領域は多数の項筋が付着し、項平面Planum nuchaleと呼ばれる。
後頭鱗の内面には2本の隆起がほぼ直交して走り、それぞれに浅い溝がある。これらは矢状溝Sulcus sagittalisと横溝Sulcus transversusと呼ばれ、静脈洞の境界となる溝である。これにより4つの窩が形成される。上の2つは大脳後頭窩Fossae occipitales cerebralesで大脳後頭葉を収め、下の2つは小脳後頭窩Fossae occipitales cerebellaresで小脳半球を収める。矢状溝と横溝を載せる隆起が十字に交差して突出する部分は内後頭隆起Protuberantia occipitalis internaと呼ばれる。
大脳後頭窩には後頭部の大脳回による凹みが見られ、これを脳回圧痕Impressiones gyrorumと呼び、大脳溝に対応する隆起を脳隆起Juga cerebraliaという。小脳後頭窩はこれらがなく平滑で、脳硬膜動静脈の溝である動・静脈溝Sulci arteriarum et venarumのみが通る。動・静脈溝は大脳後頭窩にも存在する。各後頭窩の深部では骨が薄く透光性があるが、最も薄い部分は通常顆窩にある。
左右の小脳後頭窩間の正中隆起線は幅広く、溝や深い凹みを形成することがある。この凹み(動物でよく見られる)には小脳下虫の一部が接するため虫窩Fossa vermianaと名付けられている。
後頭鱗の縁には2つの部分がある。1つは深いギザギザのついた上方部分で人字縁Margo lambdoideusと呼ばれ、頭頂骨と結合する。もう1つはギザギザが少ない下方部分で、外側部の側縁に続き側頭骨乳突部と結合するため乳突縁Margo mastoideusと呼ばれる。
分界項線は時に強く突出し、Torus occipitalis(後頭隆線)という大きな横走隆起となることがある。これはサル類の後頭稜Crista occipitalisに相当する。後頭輪の上方三角部は骨発生時に膜性に形成され、後頭平面に属し後頭輪の外側隅で伸びる。この部分が軟骨性に形成される後頭鱗下部から(横後頭縫合Sutura occipitalis transversaにより)分離し、頭頂間骨Os interparietaleを形成することがある。この骨は古代ペルー人の頭蓋でOs Incae(インカ骨)として記載された。頭頂間骨は縦方向に左右2つの対称部分に分かれることがあり、さらに他の縫合が現れることもある(RK212(頭頂間骨)、213(3分割インカ骨) )。
高齢者では、環椎の後弓が後頭鱗に圧痕を形成し、Processus paramastoideus(後頭隆線)という強大な横走隆起となることがある。
大後頭孔の近傍では、後頭骨の外表面に以下のような多様な変異が見られる:
これらの変異が一つの標本ですべて顕著に形成されると、後頭骨は環椎に似た脊椎が浮き彫りされたような様相を呈する。Kollmannはこの状態を"Manifestation des Occipitalwirbels"(後頭椎の顕現)と呼び、"Assimilation des Atlas"(環椎の同化)と明確に区別している。後者は環椎が後頭骨と癒合した状態で、この場合、後頭骨に後頭顆がなく、代わりに環椎の下関節面が見られる。
Kollmann, Anat. Anz., 30. Bd., 1907. — Schumacher, Anat. Anz., 31. Bd., 1907. — Kohlmüller, Anat. Anz., 71. Bd., 1931. — Ingelmark, Särtryck Nordisk Med. 1939.
[図211] **後頭骨:**内側面(縮尺4/5)
[図212]頭頂間骨:古代ペルー人の頭蓋。
tt:横後頭縫合。
[図213]3分割インカ骨:ドイツ人の頭蓋で、中央部が2分割されている。
[図214] 後頭骨の外面(4/5)
※後頭顆の関節面が2分している(変異)。
[図215] 側頭骨の後面および隣接する後頭骨の部分を後方から見た図(4/5)